自分の目で『見る』
少し前のこの地方のニュースになりますが、
東海地域初、室内ドローンスクール開講のニュースを見ました。
「ドローン」とは・・・?
既に多くの方がご存知かと思いますが、
UAV(英: Unmanned aerial vehicle)・・・
通称として、短くドローン(英: drone)と呼ばれている
“無人航空機”のことです。
ドローンいえば・・・
軍事用としては米軍が偵察用としてすでに運用中で、
商業用としてはAmazon、Google、ドミノピザなどが、
商品の配達目的での運用を表明し、開発を重ねています。
ドローンの形状は様々ですが、
一般的には回転翼を複数搭載し、安定した飛行が可能なマルチコプター型が主流です。
マルチコプター型の中でも、4つのローターを搭載したクワッドコプター型は、
ホビー用の安価な既製品が販売されており、
空撮を楽しむなど、個人での利用も進んでいますが、
一方で、墜落事故の危険性やテロなどに悪用される恐れもあり、
各国での規制も本格化しています。
では、本題に戻します。
先日のニュースですが、
室内型ドローンスクール・・・
ドローンの開発や販売を手掛けています会社が、
ドローンの操縦士の育成を図る目的で、倉庫を改装し(練習場を)作りました。
ニュースの中では、スクールの開講式の模様と受講者の声を取り上げていました。
ちなみにこのスクールの料金ですが、
人気が最も高いコースの2日間の訓練コースで、
税別12万円だそうです。
これは操縦訓練のみの費用で、
もちろん機体購入費用は含まれてはいませんので、
これが高いのか否か・・・。
とにかく特殊な機器を操作するのですから、
自らの力で自由に飛ばせるようになるまでの
初期投資は、必要にはなるでしょう。
初日の受講者の中心は、建設業の方だったそうです。
その中で、インタビューに登場したのが・・・
何と、“サッカースクール指導者”の方。
そのご本人の受講動機(*要旨)は、以下のようなものでした。
「小学生から中学生のサッカーの指導をしています。
より目線の高い所から(ゲームの様子を)撮影することで
ボールを保持しているプレーヤー以外の
細かい動きであるとか、ポジショニングなどを把握し、
分析することができるので、
そこに興味を持って受講しようと決めました」
・・・・・・
「サッカーの指導もここまできたのか」
と、一瞬考えさせられました。
確かに最近は、テレビ中継でも(大きな大会等においては)
空中からの撮影画像が流れるようになりました。
その画像とは、
ドイツのCCSytems社が開発した空中特殊撮影機材である“スパイダーカム”を
使用した画像です。
フィールドの上空からの画像は、
とても臨場感あるものです。
さらに・・・
このたびの話題の中心であるドローンも
ついにサッカー中継で登場するようになりました。
「2017Jリーグ アジアチャレンジ in タイ インターリーグカップ」
の試合の模様は、ドローンで撮影されました。
2017Jリーグ アジアチャレンジ in タイ インターリーグカップとは、
今シーズンのJリーグ開幕前の1月、
日本とタイの修好130周年を記念し、タイで行われた大会です。
(☞参加チーム…Jリーグ:鹿島アントラーズ,横浜F・マリノス タイリーグ:バンコクユナイテッド,スパンブリFC)
とうとうサッカーの試合も、上空から観る時代に突入したのでしょうか。
ただ・・・
気になることがあります。
試合の中継は良いのですが・・・
これを指導の現場で用いるのは、どうでしょうか?
「君はここに動いて」
「相手はそこにいるよ」
「あのスペースを見て」
など・・・
育成年代のサッカーも、
ドローンで録画した画像を見ながら指導する時代になったのでしょうか?
①ドローンからの目線・・・
確かに、ゲームの全体がよく分かりますね。
②スタンド(観客席)からの目線・・・
ドローンほどではありませんが、プレーヤーの動きはよく分かります。
➂プレーヤーの目線・・・
これは、一番見える範囲が限られています。
では・・・
プレーヤーを指導する際に、必要となる“画”はどれでしょうか?
よくゲームをコントロールできるプレーヤーは、
鳥のように、
「フィールドを“俯瞰”して見ることができる」
と言います。
しかし・・・
実際は、鳥になっているのでしょうか・・・
決してそうではありません。
ピッチレベルから、ピッチ内で起こる事象を把握しているのです。
現在もJリーグで活躍し、
長年に亘り、日本代表の中盤を支えてきたこちらの選手・・・
ピッチ全体を見渡せるプレーヤーとしての評価が抜群に高い
数少ないプレーヤーの一人です。
では、遠藤選手のその力は・・・
何で身につけたのでしょうか?
ドローン・・・??
のわけはありません。
自らサッカーをプレーする中で、
自身の工夫と努力で培った感覚なのです。
最近は、
子どもたちの学校体育の現場でも・・・
タブレットを積極的に活用しているようです。
人(自分、他者)の動きを動画で残し、
それをタブレットで再生して見ることにより、
動作を理解する・・・
手段としては、一見良いように感じます。
しかし・・・
本来人間は自分の目で見て
感じ、学ぶことができます。
人が動く、その一瞬を。
それは、幼いころから備わった人間の大きな力の一つです。
ドローンの画像は、
自分で見たものではありません。
タブレットで見る画像も同様です。
大切なことは、その一瞬にあります。
二度と見ることのない、
一瞬一瞬のその瞬間を逃さないで見ることで、
強く記憶に宿るものです。
「もう一度見せて・・・」
それは本来、ありません。
「この角度から見せて・・・」
それも本来は、ありません。
あくまで何事も、その時の“自分の目”が頼りのはずです。
少し話は変わりますが、
ここ愛知県の全国体力テストが最下位の原因は、
未だはっきりと解明されてはいません。
ここで注目したいのが、愛知教育大学の教授であり、
小学校の校長もなされていらっしゃる先生の見解です。
そこには、「体力テストの結果が芳しくない理由」が垣間見えます。
年間200回以上、小中学校の体育の授業を視察された評価として、
次のような3つの問題点を指摘されました。
・小学校45分授業の内、身体を実際に動かす時間が短い
(*運動の時間が10分ほどの授業もあった)
・ベテランの先生は、安全を優先して回数をこなさせない
●若い先生は、『タブレットで授業を撮影しそれを見せているだけ』の場合がある
実はここ数年、文部科学省の方針として
▶言語活動の充実(=コミュニケーション力のアップ)
▶ICT教育(=タブレットやコンピュータを活用した教育)
が打ち出されているそうです。
その結果、特に若い先生方は、
それに重きを置きすぎて指導してしまっている・・・
つまり、
実際の指導をタブレット等に頼り過ぎている
現実があるということです。
全体を見渡せるドローン
何度も見直せるタブレット
本当に時代は便利になりました。
最先端の技術は、子どもたちに様々な効果をもたらします。
しかし、
忘れないで欲しいのは・・・
自分の目で見て、自分で判断すること。
一瞬、一瞬を大切にすること(見逃さないこと)。
見えないのであれば、見ようと努力すること。
機械に頼るのではなく、
子どもたちが持っている五感(+六感)を信じ、
「自らで状況を把握、打開できる力」
を私は育てたいと考えています。