アレグラン渡部のサッカーの素

愛知県東海市のスポーツクラブ "アレグラン東海” の代表が、自身のサッカー観を中心に、スポーツ、教育など気になることを素直に書いていきます!

敢えて問います、「サッカーとはスポーツとは?」❷

日本代表が帰国しました。

 

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2大会ぶりのベスト16。

 

ラウンド16では、FIFAランキング3位のベルギー相手に善戦。

 

ロシアW杯本大会でのチームの頑張りは、

 

大変素晴らしいものがありました。

 

 

 

ただ・・・

 

「がんばったね」

 

だけで終わりにしたり、

 

一過性のフィーバーでは、

 

日本サッカーの成長はありません。

 

 

 

 

では、

 

その意味からも先回の続き(タイトル)を進めていきます。

 

 

 

ポーランド戦、終盤でのボールキープ。

 

結果を追い求めた中での究極の選択だったとはいえ、

 

日本代表のグループ突破のために講じた手段は、

 

世界を大きく騒がせる事態となりました。

 

 

 

このプレーについて詳細な説明は不要かと思いますが、

 

ここでもう一度、振り返ります。

 

 

 

グループリーグ最終節

 

0-1で日本がポーランドにリードされた状況。

 

 

このままの状況で決勝トーナメントに進むための条件は、

 

同時刻で開催されています他会場の

 

セネガル 対 コロンビアの結果が重要

 

でした。

 

 

グループリーグ第3節の試合開始前、

 

1位日本、2位セネガル、3位コロンビア、4位ポーランドという順位。

 

決勝トーナメント進出の可能性がある国は、

 

日本、セネガル、コロンビアの3カ国に絞られていました。

 

さらに・・・

 

日本とセネガルは、勝ち点、得点、失点、得失点差、それぞれ全く同じ状況。

 

コロンビアは勝利、最低でも引き分けが求められていました。

 

 

日本が決勝トーナメントに進出するためには・・・

 

日本はポーランド相手に

 

セネガルはコロンビア相手に

 

それぞれ勝ち点1を獲得すること。

 

 

コロンビアはセネガルに勝利すること。

 

また、

 

日本がポーランドに負けてもセネガルよりも失点が少ないこと。

 

 

このような中

 

・・・

 

日本は59分に失点。

 

セネガルは74分に失点。

 

・・・

 

82分に

 

西野監督は動きます。

 

この試合、

 

ベンチスタートの主将の長谷部 選手⑰をピッチに送り出します。

 

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そして、

 

監督の命を受けた長谷部 選手は、

 

ピッチ内の選手に“ある指示”を伝えます。

 

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それは、

 

「残りの時間、ボールをキープすること」

 

でした。

 

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ここから約10分間

 

日本は自陣でボールを回し続けることになります。

 

そして一方、

 

ゴールを挙げているポーランドも、

 

ボールを無理には取りに行きません。

 

 

試合は、歯切れの悪い状態でそのままタイムアップ。

 

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他会場のセネガルは、コロンビアに0-1で勝利を逃します。

 

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グループリーグの順位は、次の条件で上から順番に決定

 

(1)全試合の勝ち点

 

(2)全試合の得失点差

 

(3)総得点

 

それでも並んでいる場合、さらに以下の条件で決めます。

 

(4)当該チーム同士の対戦での勝ち点

 

(5)当該チーム同士の対戦での得失点差

 

(6)当該チーム同士の対戦での得点

 

(7)フェアプレーポイント

 

(8)抽選

 

ちなみに、今大会より導入されましたフェアプレーポイントは、

 

次のように計算されます。

 

イエローカード1枚目(警告):マイナス1点

 

1試合で同じ選手がイエローカード2枚目(退場):マイナス3点

 

レッドカード(一発退場):マイナス4点

 

イエローカード後のレッドカード:マイナス5点

 

 

今回のケースに当てはめると・・・

 

グループHでは2戦目を終えて、

 

日本とセネガルが勝ち点4、得失点差1、総得点3で並び、

 

直接対決でも2‐2の引き分け。

 

そして、

 

最終節は、日本とセネガルは同じスコアで敗戦。

 

順位の決定は、フェアプレーポイントに委ねられました。

 

 

日本のフェアプレーポイントは、-4

(※第1節:イエロー1枚,第2節:イエロー2枚,第3節:イエロー1枚)

 

セネガルのフェアプレーポイントは、-6

 (※第1節:イエロー2枚,第2節:イエロー3枚,第3節:イエロー1枚)

 

・・・

 

したがって、

 

フェアプレーポイントで上回っていた日本は

 

タイムアップ約10分前、

 

得点を入れることもなく

 

失点を喫することもなく

 

警告や退場者を出すこともなく

 

“このままの状況”でタイムアップを迎えれば

 

セネガルを上回って終わることになります。

 

 

 

日本ベンチは、

 

試合の最終盤の時点で、

 

他会場のセネガルが0-1で負けている情報を受けて

 

このままで(フェアプレーポイントの差で)

 

決勝トーナメントを進出できることを念頭に

 

ボールキープを始めたのです。

 

 

 

その行為に

 

・・・

 

「恥知らず」

 

と、ボルゴグラードの会場では、

 

地元ロシアのファンからもブーイングが吹き荒れることになります。

 

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勝っても負けてもすでに敗退が決定している相手側のポーランド

 

完全に足が止まり、ボールを追おうとはせず

 

試合は異様な光景に・・・。

 

 

 

ポーランドサポーターからはもちろん、

 

味方である日本サポーターからも

 

ブーイングが起こる始末に・・・。

 

 

 

ただ、このプレーにはネット上でも

 

 

西野監督の“現実主義”は、次の試合に勝つことで正当化される」

 

「2カ月前の監督交代劇があった以上、結果が全て。

 日本もこんな“試合巧者”なことができるんだと思った」

 

「結果は西野監督の思惑通りになった。

 “ギャンブルに勝った”以上、あの判断は評価されるべき」

 

「現場を預かる監督の立場からすると、

 とにかくなりふり構わず“批判も覚悟の上での判断”だ」

 

「スポ-ツは“結果が全て”。

 ここで日本チ-ムが何としてでも決勝ラウンドに行くことが

 今後の日本サッカ-界のレベルアップに必ず必要と監督は考えたのだ」

 

 

といった肯定的な意見が多く聞こえました

 

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試合翌日の朝の情報番組内でも議論され

 

「ネガティブな戦術。はっきり言って、積極的な戦術ではない」

 

というコメンテーターの意見がある一方、

 

「『ドーハの悲劇』での経験を踏まえ、プロフェッショナルとして選択した戦術

 

であることを力説するサッカー解説者

 

や、さらに

 

「戦術に消極的や積極的とかないと思う。(今回の戦術は)押し引きの、引いたほう

 なんですよ。戦術の中での押し引きは充分有りだし、野球で言ったら敬遠策という

 ものがある。『ネガティブ』と言われるのかもしれないが、敬遠も立派なルール。

 “ルール内”での戦略。これで決勝へ行けるのだから、僕は良かったと思っています」

 

といった元プロ野球選手の肯定的な意見が出ました。

 

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・・・

 

ちなみに、この元野球選手の方の一見シンプルで分かりやすい解説には、

 

正論」や「良いこと言った

 

賞賛する声が相次いでいるようです。

 

 

 

では、

 

その野球

 

・・・

 

敬遠

 

・・・・・・

 

今から26年前の夏、

 

1992年8月16日、

 

第74回全国高等学校野球選手権大会のことが思い起されます。

 

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2回戦の明徳義塾高校星稜高校において、

 

明徳義塾が、星稜の4番打者の松井秀喜 選手を5打席連続して敬遠する作戦を敢行。

 

この試合で、松井 選手が一度もバットを振ることないまま星稜が敗退した出来事・・・

 

多くの方がご存知ではないでしょうか。

 

 

この一件、

 

日本国内で「勝利至上主義」についての議論が湧き起こりました。

 

試合当日夜の報道番組では軒並みこの試合を取り上げ、

 

翌日のスポーツ新聞各紙はこの敬遠を一面に出して高野連会長の談話を掲載しました。

 

 

今大会屈指の好打者といわれた松井 選手が

 

5打席全部敬遠の四球で打たせてもらえませんでした。

 

しかも、明徳義塾の河野 投手は1球もストライクを取らず、

 

外角へ大きくはずれる20球を投げただけ。

 

 

監督の指示による「敬遠策」は成功し、

 

明徳は勝ちを手にしました。

 

 

ただ、明徳はルールに反したわけではありません。

 

一方、果たしてこの勝ち方で良かったかどうかです。

 

 

試合後の新聞記事(コラム)が印象的なものでした。

 

「四国の野球が石川の野球に負けられない」と豪語していたのに、

 フタを明ければ姑息な逃げ四球策とは、他の四国勢が聞けば憤然とするだろう。

 〔中略〕

 しかし、“どんな手段”を取ってでも「勝つんだ」という態度は、

 どう考えても理解しがたい。

 特に、走者のいない二死無走者(七回)までもボール連発を命じた時は、

 大人のエゴを見たような気がして、不愉快ささえ覚えた。

          — 朝日新聞「大事なもの忘れた明徳ベンチ」1992年8月17日付夕刊8面

 

かなり辛辣なこの記事は、

 

朝日新聞社内でも波紋を呼び、

 

特に高知支局からは反発が強かったそうです。 

 

 

後年ですが、

 

明徳義塾の監督は、雑誌インタビューで次のように答えています。

 

「私は今でも間違った作戦だったとは思っていない。

 あの年の星稜は、高校球児の中に1人だけプロがいるようなものだった。

 あれ以前も、あれ以降も、松井ほどの大打者と僕は出会っていません。

 甲子園で勝つための練習をやってきて、

 その甲子園で負けるための作戦を立てる監督なんておらんでしょ?

 勝つためには松井を打たせてはいかんかった」

 

・・・

 

一方で

 

「ただ、46歳の大人になった今振り返れば、

 大人の作戦のために17、18歳らの子ども達に嫌な思いをさせてしまったこと、

 特に松井の次の打者に迷惑をかけてしまったことに気づかされます」

 

とも語っています。

 

 

また、

 

この大会のちょうど翌年、

 

甲子園大会を前に雑誌『Number』が「敬遠の夏」と題し、

 

この敬遠事件の特集を組みました。

 

特集の中では星稜、明徳両校の視点だけでなく

 

“観客からの視点”もあり、興味深いものでした。

 

「(入場料を払ってまで)野球を観に来た観客の楽しみは、

 勝敗以前に松井がこの試合で如何にして打つか、

 また相手投手が松井を如何にして抑えるかにあった。

  〔中略〕

 観客が(入場料を払ってまで)楽しみにしていたものを

 “5打席敬遠”という予期せぬ形で奪われた

 (明徳へ)『帰れ!!』コールのその気持ちは十分理解できる」

 

としています。

 

 

 

 

そして、敬遠といえば・・・

 

よく似たケースとしてサッカー界では、

 

9年前にショッキングな出来事がありました。

 

 

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それは、2009年1月にとある県の「県選抜中学生フットサル大会」で起こりました。

 

県立A中学校は、予選リーグ3試合あるうちの予選2試合を連勝。

 

すでに決勝リーグに進出することは決まっていたのですが、

 

残りの1試合に勝ち1位通過した場合、

 

次の決勝トーナメントの相手が

 

過去に負け越している相性の悪いチームになるため

 

・・・

 

指導者は、前代未聞の戦略を用います。

 

 

A中学校のフットサル部の指導者を務めていた教師(教頭)は生徒に対し、

 

“わざと負ける”ように指示し、

 

予選リーグの2位通過を目指します。

 

 

生徒は、教頭のこの指示を受けた試合開始直後、

 

“故意”に

 

『6連続オウンゴール

 

を“決め”ます。

 

この後、審判の注意、相手チームからの抗議があったようですが、

 

「大会規定に抵触する行為でなかった」

 

ことから試合は続行、

 

A中学は“狙い通り”0-7で敗れました

(ちなみに、同校はその後の決勝トーナメントでは1回戦で敗退します)

 

 

この事件(●敢えて事件と呼ばせていただきます)は、

 

サッカー界でも大きな波紋を呼びました。

 

 

この「故意による敗戦」に対して、

 

JFAは2009年4月9日に行われた理事会で、

 

オウンゴールの指示をした教頭に対し

 

指導者資格を持たない教員に対する異例の処分を下します。

 

 

「12カ月(1年間)のサッカー関連活動の停止」

 

理由は、競技及び競技会における罰則基準のうち、

 

「チームによる著しい違反行為」

 

に該当したということです。

 

ちなみに、新潟県教育委員会も減給1カ月の懲戒処分を下しました。

 

 

 

では、

 

これらの全国高校野球選手権大会、県中学選抜フットサル大会2つの事例は、

 

育成年代のスポーツで起こったことだから

 

学校体育の一環の部活動での出来事だから

 

ワールドカップと比べてはいけないものでしょうか

 

 

 

確かに・・・

 

これらは、未成年のアマチュアチームが行ったことであることは

 

間違いありません。

 

 

 

一方でまた、

 

日本代表は、アマチュアではなくサッカーを職業とするプロの集団です。

 

 

だからこそ、勝負に拘る部分がプロとして求められるのも解ります。

 

 

決勝トーナメントに進むか否か、経験を得るか得ることができないか・・・

 

これは4年後のカタールW杯はもちろん、

 

今後の日本サッカーの将来にも関係してくるのも解ります。

 

 

 

その部分は、自身も充分理解しています・・・。

 

 

 

が、しかし、

 

 このたびの日本代表のボールキープについて

 

『フェアプレーという観点から疑義が残る試合運びをした』

 

にも関わらず

 

『フェアプレーポイントで上位進出した』

 

という部分が・・・

 

つまり、

 

国内外の様々な人々の

 

“心”の部分

 

を逆撫でしたことは間違いありません。

 

 

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それは私も同じです。

 

 

 

勝負の世界、プロの世界は厳しい・・・

 

 

でも、

 

スポーツは人間がするものです。

 

 

 

不適切な表現かも知れませんが・・・

 

所詮、勝ち負けとはいえ、

 

人間の人生の一瞬の出来事なのです。

 

 

 

気づけば、その結果も忘れ去られるものです。

 

 

 

であるならば・・・

 

勝ち負けに拘るあまりに

 

美しくないものを選ぶべきでしょうか?

 

 

 

せっかくならば・・・

 

私は美しいほうを選びたい。

 

 

 

結果は忘れ去られます。(データとして残るだけです)

 

 

 

しかし、

 

心の痛みや傷というものは、

 

簡単に消し去ることはできません。

 

 

 

決勝トーナメントの(舞台で試合ができる)経験は

 

確かに重要です。

 

 

 

しかし、注釈がつきます。

 

 

 

『誰が見ても分かる』

 

『はっきりとした勝ち方(グループ突破)』

 

進む決勝リーグでなければいけない

 

のです。

 

 

 

ルールを犯していないから

 

は、ポイントではないのです。

 

 

 

▷四球も敬遠ではない、打者との真剣勝負の末のファーボールだったら

 

オウンゴールも必死でゴールを死守しようとした結果の失点だったら

 

▷フェアプレーポイントや抽選での決勝トーナメント進出も

 最善、最大の努力(死力)を尽くしての結果であれば

 

・・・

 

プレーヤーにも指導者にも最高の経験になります。

 

 

そして、観ている人にも感動を与えます。

 

 

 

 

「目的のために手段を選ばず」

 

の結果は、一体何をもたらすのでしょうか。

 

 

 

 

スポーツの良さ、価値とは何でしょうか?

 

 

 

 

それは、人間が為す行為、

 

そのものの美しさではないでしょうか。