経験に裏付けられた技術
早いもので、6月も第2週に入りました。
来月は、ここ愛知県では、お相撲さんを見かけることが多くなります。
大相撲の名古屋場所が、始まるからです。
さて、この相撲の命ともいえる土俵ですが、
この土俵づくりというもの・・・
どのように進められていくのか、ご存知でしょうか?
つい先日、あるテレビ番組内で、
2つの有能な職人の方を、紹介するコーナーがありました。
ひとつめは、「土俵づくり」
ふたつめは、「すり鉢づくり」
この2つを観ていて、
大きな気づき
がありましたのでご紹介します。
[土俵づくり]
固い土俵は、正に土盛りから始まります・・・
土を盛ったら
1.「たこ」と呼ばれる(把手のついた臼のような)道具を
ふたりで持ち上げては落として土を固めます。
2.次に、棒の先に重い角材をつけた「たたき」で
土をたたきます。
そして、このたたきですが、
“バシッ”、“バシッ”とても良い音がします。
思わず、自分もたたいてみたくなります。
しかし、この気持ちの良い音・・・
熟練者でなければ、
『音すらしない』
そうです。
[すり鉢づくり]
すり鉢づくりには、そのすり鉢の命ともいえる
筋目である“ギザギザ”を入れる工程があります。
それは、まだ柔らかい粘土の器の内側に、
のこぎりの歯のような道具で、
多数のギザギザの筋目を入れていきます。
ただただ、筋を入れるだけのようですので、
これまた、「自分でもできる」と思ってしまうのですが・・・
『全く上手くできない(ひけない)』
みたいです。
つまり一見、どちらも簡単に見えて、できないものです。
「自分(素人)にもできるだろう」
と感じてしまうのは、
その作業が、単純であるからだと思います。
だから、誤解をしてしまうのでしょう。
しかし、その単純な作業の中に、
実はとても大切な“感覚”や“調節”のようなものがあるのです。
つまり、素人にはそれが感じ取れないのです。
「誰にでもできる」
「簡単だ」
実はそうではないのです。
そこには、長年の熟練した技術と経験が必要となります。
何回も何回も失敗を繰り返し、
そのたびに師匠や先輩から叱られ、
汗や涙を流し、
そして、誰もができない域に到達していくのです。
技術の習得とは、
実は皆そのようなものではないでしょうか?
しかし、昨今インターネットや書店で見かける書籍には、
○○日で習得可能!
短期間でマスターする●●
などのうたい文句が多数並んでいます。
プロは、技術を持っています。
それは、私たち指導者にも同じことが当てはまります。
しかし一方、その技術を身につけることは、それほど簡単なものでしょうか?
土俵づくりやすり鉢づくりを見ても、
本物には差があります(差が出ます)。
誰でも簡単にできるものというものは、
「それくらいのもの」
というところが、正直なところではないでしょうか。
ただの見た目の光りではなく、
“そのもの自体が放つ輝き”は『本物』であり、
誰も真似ができません。(決してコピーはできません)
スポーツクラブ、サッカークラブ、その中での指導の方法も乱立しています。
しかし一方で、簡単に対象者を上手くさせる方法があるのでしょうか?
マニュアルに則して、対象者にメニューを与えていれば、上手くなるのでしょうか?
それで上手くなるのであれば・・・
残念ながら、それくらいの(価値の低い)ものでしょう。
本物は、それほど多くあるわけではありません。
なぜなら本物の技術を習得するためには、大変な努力が必要だからです。
若い人には、指導者は務まらないのか・・・
そういうわけではありませんが・・・
ただ、『一流』になるためには、
そこに到達するための経験は間違いなく必要です。
その一流になるための過程が、人間を高めていくのです。
指導者自身の「追及する姿勢」、「繰り返される自問自答」・・・
その中で本当のことを知り、
ブレない真の技術 を培っていくのです。