指導者の地位向上に向けて
指導者になり、20年余りが過ぎました。
この立場に就いた当初から現在まで、現実として感じますのが、
ずばり・・・「指導者という職業の地位の低さ」です。
但し、代表チームの指導者、Jクラブの指導者であれば別ですが、
街クラブの指導者で、
これを生業としていますと、
多くの方からいただきます第一声は・・・
「大変ですね」
という言葉です・・・。
『大変』という言葉に含まれています意味・・・
これには、いろいろあります。
本当に私たちの身を案じて、心からかけていただく一言。
その一言はとてもありがたく、勇気がわいてきます。
しかし、次のような意味で(「大変ですね」を)おっしゃられる方もみえます。
「(しんどいことを)よくやりますね」
「(生活面を)どうやって暮らしているのですか?」
いう、半ば“興味本位”の方です。
(*実は、このような方が大半です)
ただ、最も悲しくなりますのが、
「好きなことをしていいですね」
「うらやましいですね」
といった気持ちから発せられる「大変ですね」です。
これの何が問題になるのか?
この言葉のどこが気になるのか?
実は・・・
上の言葉の裏に
『好きなこと“だけ”していいですね』
『“遊んで暮らせて”うらやましいですね』
という意味があるからです。
「なぜ分かるのか?」
といいますと、
相手の話す口調や、表情が語っています。
“いい身分”ですね・・・
と言われますと、
確かにそうかも知れません。
“好きなことを仕事”にしていますから・・・。
しかし、
この『子どもを育てる仕事』というものは
とても重要で、
この社会の行く末を左右しているといっても過言ではありません。
ただ、やはりその意義が、世間一般に広がってはいません。
対象者が“低年齢”
“名が通っていない”団体
の指導者は、
どうしても発言力は弱く、
肩身の狭い思いを強いられることになります。
これは、スポーツ業界に限ったことではありません。
例えば、幼児を担当します、保育士、幼稚園教諭の先生方です。
幼児を担う先生より、
大学の教授の方が、
世間の見る目が違うと思いませんか?
その大学でも、
名前が広く知られていない大学より、
国内有数の大学で教鞭を執っていらっしゃる方が、
優れているという印象を受けるのではないでしょうか?
では、どうすれば『本当のこと』が伝わるでしょうか?
それは、現場の人間の「信念」と「努力」、
そして、その“継続”に尽きると思います。
話を低年齢のスポーツのことに戻します。
先回も書きましたが、
幼児、小学生のサッカーは、
普及という名のもと、
『面白おかしく』
ということが中心で、
“楽しませた者勝ち”(←分かり易くは「つかみはOK」)
という雰囲気が、跋扈して(はびこって)います。
確かに、スポーツは楽しくなければいけません。
(特に入り口辺りの対象者には・・・)
しかし・・・
『そもそもスポーツそのものは楽しいもの』ですから、
過剰に、そして誇張する必要があるのでしょうか?
そして、その“お笑い”芸人のような振る舞いの背景にある考えは、
「低年齢の子どもは、
▲話を聞けない・・・
▲難しいことは理解できない・・・
と思っている」というものです。
ただ、長年この世界におりますと、はっきり分かったことがあります。
そして、人の親になって、さらにはっきり分かったことがあります。
『子どもに真面目に向き合えば、
低年齢であっても、人は動きます』
それは、一人一人の子どもに“心”があるからです。
一方で、それ(心)に向き合わなければ、
子どもは解ってくれません。
もちろん、動いてもくれません。
だから・・・「面白おかしく」に走るのだと思います。
でも、それを続けているから
一向に、低年齢の指導者の地位が変わらないのだと思います。
繰り返します。
幼い子どもであっても、
理解はできます。
上手くもなります。
つまり、“どんどん良くなれる”ということです。
それが、『成長』というものです。
私たち低年齢対象の指導者は、
この人の成長というものを導き出すことを、
仕事にしているのです。
低年齢層の指導こそが、
人間の基礎をつくる手助けをする
重要な仕事だと思います。
「低年齢対象の指導者の地位」
が変わっていかなくては、
『日本の力は、強くなっていかない』
といっても過言ではないと思います。
(◎トップチームだけの強化では変わりません)
最後に、地位とは?
いろいろな捉え方があります。
●位(くらい)
●身分
という意味もありますが・・・
実は、私が訴えたい地位には、
『“もうひとつの”大切な意味』があります。
それは、
『果たす役割から見た位置』のことです。
(*例:「重要な~を占める」)
地位が変わらないと、
地位を向上しないといけません。
私たち低年齢の指導者が
その“果たす役割”を充分認識し、
真面目に努めていかないといけません。