アレグラン渡部のサッカーの素

愛知県東海市のスポーツクラブ "アレグラン東海” の代表の渡部貴朗が、自身のサッカー観を中心に、スポーツ、教育など気になることを素直に書いていきます!

甘さ・ぬるさ・・・

FIFAクラブワールドカップ ジャパン 2016」

が終わりました。

 

決勝のテレビ平均視聴率は26・8%、

瞬間最高視聴率は36・8%。(*ビデオリサーチ調べ、関東地区)

 

多くの人が注目した一戦で、

開催国代表のJリーグ、鹿島アントラーズが、

優勝したレアル・マドリード(スペイン)に善戦したことは、

日本のサッカーファンを大いに勇気づける出来事でした。

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さて、このクラブワールドカップを観ていますと、

つくづく

 「“世界”は、広いな」

そして

 「“世界”は、強いな」

と感じさせられます。

 

例えば・・・

今回のアフリカ代表、

マメロディ・サンダウンズ。

南アフリカ共和国のチームで、

同国のプレトリアのマラバスタッドで1960年代初頭、若者達によって設立され、

1970年に公式なサッカークラブになったそうです。

そして1996年、南アフリカにナショナルプレミアリーグが設立されて以来、

このリーグを7回制覇している強豪チーム。

 

また、「The Brazilians」の愛称があるようですが、

これはクラブのユニフォームが、

ブラジル代表と似ていることから、そう呼ばれているそうです。

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ただ日本にいるだけでは分からないこと・・・

たくさんあります。

 

 

少し前のことになりますが、

世界を紹介する、あるドキュメンタリー番組を観ていました。

その番組(その回)では、ボリビアの首都ラパスを取り上げていました。

 

まずボリビアとは、

正式名称は「ボリビア多民族国」。

国の面積はアメリカ大陸では8番目、ラテンアメリカでは6番目に大きい国で、

世界では27番目に大きい国です。(*日本と比較しますと約3.3倍)

憲法上の首都はスクレだそうですが、

議会をはじめとした政府主要機関は、ラパスにあります。

少し複雑な側面があります。

 

かつて豊かな天然資源を持っていたのですが、

実際には、貧しい経済状態が過去から続いており、

現在もラテンアメリカ貧国の一つといわれています。

ボリビアの大きな問題点は、貧富の差です。

輸出品として、亜鉛天然ガスなどがあるそうですが、

それらの利権を確保している一部の層には、富はきちんと行き渡っているようです。

「あるところにはある」のですが「それ以外の人々は貧困にあえぐ」、

という構造が存在するようです。

ただここ数年、モラレス政権の政策が功を奏し、

収入格差は着実に縮小していると伝えられています。

しかしそれでもなお、就労可能年齢が14歳から10歳に引き下げられ、

(児童からの労働力の搾取が懸念される)など、

子どもたちにとって暮らしにくい状況が続いています。

 

事実上の首都であるラパスの中心街の標高は、3600m強です。

つまり、

『日本最高峰(標高3,776.12 m)富士山とほぼ同じところに中心街がある』

ということになります。

そして、ラパスの地形は、すり鉢状。

中心街はもちろんですが、すり鉢の上に行くほど高度は高くなります。

その高さから、またの名を“雲の上の街”とも呼ばれています。

人々は、すり鉢の底の部分に高所得者が、縁の部分に低所得者が居住しています。

「より高度の高いところ」に、低所得者が押し込められているような状態です。

さらに、現在に至るまで人口は増え続けており、すり鉢の内側はほぼ飽和状態。

 (したがって、ラパスの隣のエル・アルトにも市街地が拡大してきています)

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話は、ドキュメント番組の一番面に戻ります。

番組もクライマックスに近づき、絶景で有名なラパスの夜景を撮るため、

撮影クルーは、すり鉢状の坂道を上へ上へと向かっていきます。

 

カメラは、貧困層がひしめく住宅街に進んでいきます。

この途中の凸凹で急な石畳でボールを蹴っている4人の少年たちに出会いました。

年齢は、(全て推定ですが)中学生1人、小学校高学年2人、小学校中学年1人。

 

その中の一人が、この界隈で有名なサッカーが上手いと評判の

“サッカー少年”

でした。

(事実、番組内でも我流ながら、良い姿勢でボールリフティングができていました)

 

しかし、驚かされたのは、実はそれではありません。

 

撮影クルーが

「サッカー、本当に上手だね」

と話すと

少年は

「プロのサッカー選手になりたいです」

と答えました。

 

さらに

「代表選手になって、ワールドカップに出たいです」

ボリビアのために』

撮影クルーは、

この言葉がふと不思議に思い

ボリビアのために?どうして?」

と尋ねます。

 

その問いに対し、少年は一瞬声に詰まりますが、

はっきりと答えます。

ボリビアの貧しい子どもと貧しい女性を助けたいです」

『それが僕の夢です』

・・・

話ながら、少年は涙を流し始めます。

 

撮影クルーは、その涙の意味を尋ねます。

「何で泣いちゃったの?

 貧しい人を助けること、とても素敵な夢だと思うよ」

 

その問いに対し少年は・・・

(頷きながら)

『みんなを助けたいけど、

 “ボリビアの現実は厳しいから”』

と答えます。

・・・

 

クルーに

「そんなことはないよ。

 君はあんなに(サッカーが)上手いんだから。

 絶対、絶対に叶うよ」

と励まされます。

 

画面を前に、思わず息をのみました。

あまりにも切ない、その一連のやりとりに・・・。

 

自身は、

この少年と同じような年齢の子どもと毎週出会い、

サッカーをしています。

 

その子たちは、

『誰のためにサッカーをやっているのでしょうか?』

  親が勧めたから?

  友だちがいるから?

  何かスポーツをする手段の一つとして?

 

このボリビアの少年と

日本の少年を単純に比較することができないことは、

充分理解しています。

 

しかし・・・

そのあまりにも大きな“意識の違い”に、

愕然とさせられました。

 

 

 国のために

 人のために

 

 社会を変える手段として

 臨むサッカーと

 

一方、

動機がただ単に

 

「サッカーの日だから」

するサッカーと

 

意識レベルに、大きな開きがあります。

 

 

日本の子どもたちの状況(動機、意識)・・・

正に、このたびのタイトル

 

甘さ・ぬるさ

 

は否めません。

 

だからでしょうか・・・

 

 サッカークラブAがそぐわなければ

 サッカークラブBに移る

 ・・・

 Bで同じような状況になれば

 サッカーが合う、合わないということで

 サッカーから、他の活動(習い事)に変わる

・・・

 

私たちの身近には、このような構図があります。

 

本当にこれでいいのでしょうか?

 

番組に登場していました少年の素生は、分かりません。

 

しかし、

(所得の問題から)サッカーを専門コーチに教えてもらっていることは

まず考えられません。

 

ラパスの少年たちの練習場所は、

自宅前の凸凹の斜面の坂道です。

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ボールコントロールを失えば・・・

一気に坂道の下までボールは転がっていきます。

 

もし、

この少年が将来、代表チーム入りして、

日本と相対したら・・・

 

思わず、日本の惨敗を想像してしまいました。

 

その理由、

また差は、

述べました通り、

 

(日本の環境の)

甘さ・ぬるさ

 

です。

 

日本は、一見環境は整ってはいるけれど、

子どもが逞しく成長していく環境とは決していえません。

 

まず

 

世界に目を向けること。

 

この意識ひとつで、

大人として何を子どもに為すべきか

見えてきます。

 

最後に、

この少年たちの兄弟や仲間の将来についての夢について・・・

 

最年長のお兄ちゃん(*年齢は中学3年生位)

「僕はサッカー選手じゃなくて、勉強がしたいです」

「専門職に就いて、弟たちを助けたいです」

 

サッカーが上手い少年の友だち(*年齢は小学校高学年位)

「僕は建築家になりたい」

「壊れている建物を直したり、色を塗ったりデザインして

 汚い建物をきれいにしたいです」

 

驚くべき、

“具体的な夢や希望”

・・・。

 

同年代の日本の子どもたちに、

同じような将来に対しての質問を投げかけると、

どのような答えが返ってくるでしょうか??

 

親として

指導者として

わが子や

教え子を想像して

 

「やばい」

 

と感じられたなら、

その引き金になっているのは、

 

“甘さ” や “ぬるさ”

 

なのかも知れません。

 

強い人間

しっかりとした人格

を育てるには・・・

子ども任せではなく、

大人のはたらきがけ(環境づくり)

は欠かせません。

 

なぜなら・・・

 

子どもを取り巻くこの日本社会は

あまりにも『豊か過ぎる』

からです。