アレグラン渡部のサッカーの素

愛知県東海市のスポーツクラブ "アレグラン東海” の代表の渡部貴朗が、自身のサッカー観を中心に、スポーツ、教育など気になることを素直に書いていきます!

あれから19年・・・

先回、子ども時分のサッカーを考える意味からも

『育成』の観点から、子どもたちの試合や大会について書きました。

 

その子どものサッカー大会の全国大会が、今年も開催されます。

12月25日から29日、鹿児島県で開催されます「全日本少年サッカー大会」です。

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この小学生年代のサッカー大会・・・通称“ぜんにち”ですが、

昨年から小学校の夏休みの開催から、冬休みに移行しました。

冬開催2年目となる「全日本少年サッカー大会」は、

今年で、なんと40回目になります。

 

 

今から2年前の夏ですが、

自宅の書庫から17年前(*当時)のあるサッカー雑誌を発見しました。

(▲巻頭はフランスW杯最終予選企画です。時代の流れを感じます・・・。)

目にした瞬間、まず「あの選手やコーチが若い」が、第一印象でした。

その後、ページをめくりますと、当時の小学生の全国大会の結果が出てきました。

 

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*ちなみに、19年前の全日優勝チームは、J下部のレイソル・ユースでした。

 

記事の終わりあたりに、大会優秀選手が記載されていましたので、

最新の情報技術を駆使して、全員検索をかけてみました。

 

題して、「あの人は今」です・・・。

正に、この年の夏休みの“自由研究”でした。

 

そこで、驚く結果が分かりました。

この雑誌の発売時、小学校高学年であれば、調べた年では28,29歳の方でした。

この年齢は、(ポジションにより多少の違いはありますが)

一般的に最も完成されたサッカープレーヤーといわれる年齢です。

その理由は、「肉体的ピークと、経験値が上手く重なり合う時期」だからです。

ちなみにこの世代で、現在国内、海外で活躍する有名なアスリートとしては、

以下の通りです。

当時5年生では、岡崎慎司 選手(レスター・シティFC)、本田圭祐 選手(ACミラン)、

長友佑都 選手(インテルミラノ)、マヌエル・ノイアー 選手(バイエルン・ミュンヘン)・・・

6年生では、豊田陽平 選手(サガン鳥栖)、李忠成 選手(浦和レッズ)、

川澄奈穂美 選手(シアトル・レインFC)、クリスティアーノ・ロナウド 選手(レアル・マドリード)

など、現在所属クラブチームやナショナルチームでも、主力として活躍しています。

 

さて、今から19年前の

日本の小学生サッカープレーヤーの

『全国優秀選手全35人中』で、

 

現在、“プロサッカー選手で活躍されている人”は・・・

 

なんとびっくり

 

『2人』だけでした。

 

田坂祐介 選手(川崎フロンターレ)と

カレン・ロバート 選手(ノースイースト・ユナイテッドFC/インド)です。

 

また、その他、現在もサッカー界で活動されている方は、何人でしょうか?

 

はっきりと分かっている限りでは、8、9人です。

つまり、

4分の1程度以外(大半)がサッカーを辞められたか、

少なくとも、現在は指導者を含めサッカー界で、

インターネットに出てくるような顕著な活動をされていないことになります。

 

さらに更に詳しくは・・・

中学以降の進路で、サッカーの活躍の舞台がはっきりしていた方は、15人。

国内(*年齢別)代表選手になった方は、3人。

 (▲現在、お辞めになられた方も含みます)

 

この自由研究で、何を明らかにしたかったのかといいますと、

小学生年代で「強い」、「上手い」と評判の子どもたちが、

『果たしてそのままプロの世界に、

 そして日本代表選手へと確実にステップアップしていったのか』

を調べてみたかったのです。

 

しかし、結果は予想外でした。

 

たまたまこの年代は、それが叶わなかったのかも知れません。

 

ただ・・・本当にそうでしょうか?

 

サッカー、スポーツに限らず、

バーンアウト燃え尽き症候群)』という言葉は、あまりにも有名です。

 

自身が育成期を担当した中にも、抜群に上手い子もいまして、

Jリーグ下部組織に合格受し、

また、全国高校選手権で出場するプレーヤーもいました。

教え子だけではなく、育成年代の試合を観る中で、

J下部等、全国レベルの競技力を有するプレーヤーのその後も、

実際目の当たりにしました。

 

現実は、続けている子、辞めてしまう子、様々です。

「あれほど上手かったのに」・・・です。

 

つまり、小学生の頃に「上手い」と評判の子が、

そのまま順調に優秀なアスリートへと成長することは、

難しい現実があるということです。

 

原因は一体何でしょうか?

 

その要因のひとつが、

バーンアウト燃え尽き症候群)ではないでしょうか。

 

では、バーンアウトとは?

「一定の生き方や関心に対して献身的に努力した人が、

 期待した結果が得られなかった結果、感じる徒労感または欲求不満のこと」

を指します。

 

なぜ、バーンアウトになってしまうのか・・・

それは、ある年代までの大人(指導者、保護者)が、子どもたちを省みず、

“勝利という結果にこだわりすぎる”からではないでしょうか。

 

全てではありませんが、

大半のサッカー強豪チームと呼ばれる団体は、

“競技そのものの楽しさ”より、

“全国大会に出場する方法”や、

“直近の試合(リーグやトーナメント)に勝つ方法を教える”こと

最優先にさせがちです。

その結果、徐々に「自分でサッカーをやっている」感覚が薄れ始めます。

 

子どもたちは、

『与えられたレールの上に乗せられ』、

『決められたトレーニングやゲームをこなして』、

その後は、『当然のように推薦制度で進学』していきます。

その中で、ふと“自分の人生に疑問”を持ち始めます。

 

サッカーをすることは?

学校のため?、監督のため?、期待してくれている親のため?といったように

サッカーが「自分のためではないスポーツ」

になってしまっている現実に気づき始めます。

そして、生真面目な子どもほど、

「これまで長い時間を費やしてきたのだから、今さら辞めるわけにはいかない・・・」

といった子どもながらに、“義務感”を感じ始める子も出てきます。

とても切ないことです。

 

それら鬱積した感情が、ある日爆発し、

バーンアウトシンドローム』を引き起こします。

 

大よそ、上手ければ上手いほど、伸びれば伸びるほど、

指導者や保護者の期待が大きくなり、求めるものも過剰になっていきます。

しかし、その挙句にバーンアウトでは・・・

何のためのサッカーなのか、何のためのスポーツなのか分かりません。

 

子どもたちが“素直”に

『サッカーって、スポーツって、やっぱり楽しいな!』

と言ってくれるような環境を、大人はつくっていく必要があります。

 

子どもたち一人一人が、

自分の未来が描けるような(将来につながるような)指導

それと併せて

サッカーというスポーツを

自らがボールを蹴ることができなくなるまでプレーを続けられるような、

『サッカーを愛する気持ちが育つ環境』を整える必要があります。

 

 

とにかく大切なことは・・・

今ではなく、『子どもたちの未来の姿』なのです。

 

それに気づく大人がたくさん増えた時、

「日本のサッカー文化は発展した」

と初めていえるのではないでしょうか。