日本人の長所
先回、先々回と、続けて日本サッカーの育成環境の問題について書きました。
しかしここで、
「日本は本当にダメなのか?否か?」
落ち着いて考えてみたいと思います。
先日、日本のJリーグにも在籍しました、世界的なプレーヤー、
元ウルグアイ代表のディエゴ・フォルラン選手が、メディアに対して
日本人の国民性について言及していました。
その内容は、以下の通りです。
「日本人はすべてをパーフェクトにこなそうと努力する。
他の国の人間が、日本人のように振る舞うことは不可能だよ。
アジアにそのような国は少ないね。
ウルグアイにも、若い日本人は多く見かけるよ。
彼らは自身を向上させるべく、学びにやって来る。
日本人は、どんな出来事からも学ぶことができると信じている。
ウルグアイやブラジル、そしてアルゼンチンなどのサッカー先進国では
多くの若い日本人を見つけることができるだろう。・・・」(sport star live/インド)
ディエゴ・フォルラン選手のこれまでの簡単な経歴をご紹介しますと・・・
2004-05シーズン(ビジャレアルCF/スペイン)と2008-09シーズン(アトレティコ・マドリード/スペイン)、
ヨーロッパ・ゴールデンシュー(*旧称:ヨーロッパ・ゴールデンブーツ)を2度受賞。
サッカーウルグアイ代表の最多出場記録保持者であり、2010 FIFAワールドカップではMVPに選出。
その他、イングランドプレミアリーグのマンチェスター・ユナイテッドFC、
イタリアセリエAのインテル・ミラノといったビッグクラブでもプレー経験を持つ、
正に世界を知る一流プレーヤーです。
2014年1月から2015年7月まで、日本のJリーグ、セレッソ大阪でもプレーしました。
フォルラン選手は、15歳の時に、ウルグアイの名門CAペニャロールと契約。
18歳になる年、同国のダヌービオFCへ移籍。
そして19歳で、アルゼンチン(CAインデペンディエンテ)を皮切りに、
イングランド、スペイン、イタリア、ブラジル、そして日本と世界を渡り歩きます。
そらに、(日本を離れた後)古巣ウルグアイのペニャロールを経て、
今年8月にインドのムンバイ・シティFCと契約。
正に“世界を知る”サッカープレーヤーなのです。
だからこそ、外(世界)から見た日本人がよく分かるのだと思います。
フォルラン選手から見た日本人の特徴・・・
『最善を尽くす姿勢』
『謙虚に学ぶ姿勢』
これらを持っているのが、“日本人”ということです。
そして、次に先日の現日本代表監督のハリルホジッチ監督の言葉です。
8月21日に閉幕したリオデジャネイロオリンピックの4日後、
9月1日のW杯アジア最終予選・UAE戦、6日の同タイ戦に臨む
メンバー発表記者会見の席での言葉です。
「五輪を見てほしい。
日本の全スポーツでのメダル数は、かなり良いランキングだった。
スポーツ界全体ではレベルが高いということ。
日本の歴史上、初めてのことがいろいろあった。
400mリレーで日本の選手がアメリカの選手を破った。
アメリカは、一人では速い。
ただ・・・
日本全員でかかったら、
リレーになったら、
日本のほうがアメリカより強かった。
彼らも“アメリカに勝つ”という自信を持って臨んでいた。
そういうところをA代表にも植え付けたい。
組織になったら、日本人はなんでもできる。
それを信じてください。
そういう強い気持ちを持ってください。
それは自分の勇気から始まります。
それはまず自分をリスペクトし、相手をリスペクトするという発想です。
つまり、スポーツ面で違う性格を持たなければならないということです」
日本陸上史に残るレースを、
ハリルホジッチ監督は、前回の代表チーム発表の場面で用いました。
それは、確かにサッカーにおいても大切な2つです。
華麗なバトンパスで世界2位となったリレー陣の連係から・・・
『技術力』
と
『チーム力』
です。
皆さまもご存知のリオデジャネイロオリンピック第15日(19日=日本時間20日)、
陸上男子400メートルリレーの決勝、
予選と同じ山県亮太 選手、飯塚翔太 選手、桐生祥秀 選手、ケンブリッジ飛鳥 選手の
オーダーで臨んだ日本は、37秒60の日本新&アジア新記録で銀メダルを獲得。
日本男子がトラック種目でメダルを手にしたのは、
北京大会の同リレーの銅以来2度目で、銀は最高成績でした。
勝利の要因のひとつが『バトンパス』。
下から差し上げるように行う“アンダーハンド”を採用。
手を伸ばし、上から振り下ろして渡すオーバーハンドのように
利得距離(腕の長さの分、走らなくてすむ距離)は稼げませんが、
渡す側と受ける側の双方がフォームを乱さず走ることを優先させました。
しかし、それだけに終わらず、さらに改良を加えました。
受ける側の腕が、後ろに伸びた際に手渡すかたちにしました。
『利得距離を稼げ、きっちりと合えばスピードが出るかたち』
になりますが、これはその分「リスクも大きく」なります。
失敗も覚悟で勝負に出て、メダルを手繰り寄せました。
つまり、そのかたちを五輪前に入念に準備し、見事成功し、結果につなげたのでした。
決して、本番の無謀なチャレンジが奇跡を呼んだわけではありません。
アメリカのAP通信は、
「日本は100メートルで10秒を切る選手はいないものの、
バトンの受け渡しの正確さが有利に働いた」
と分析し、
「日本のバトンの受け渡しは常にスムーズだ」
という世界最速の男、ウサイン・ボルト選手のレース後の談話も伝えました。
そしてご自身も、北京オリンピック男子400メートルリレー銅メダリストである
朝原宣治 氏も
「ゴールで米国とカナダが日本の後ろにいる。
信じられない光景でした。
バトンパスの思い切りの良さには、
お互いが信頼しきっていることがよくわかりました。
他競技を見ても、日本人はチームプレーになると特に力を発揮するようです」
と新聞紙上のコラムで述べられました。
別競技ですが、陸上400メートルリレーでのパフォーマンス、結果を観て、
日本人の長所について、改めて気づかされました。
①バトンパスの高い技術力
②4人のチーム力(協調性)
①の技術力の高さは、
これまでもスポーツ以外の他の分野においても、世界から高い評価を得ています。
例を挙げますと、
与信管理APSクラウドサービスを提供するリスクモンスター株式会社が行った
『世界に誇れる日本企業』の調査では、
1位は「トヨタ自動車」
2位が「ソニー」
3位は「本田技研工業(ホンダ)」
が選ばれる結果となりました。
*“与信管理”とは、「売掛債権は増大しながらも、損害の発生は抑制する」管理のことです。
なぜこれらの企業が『世界に誇れる企業』として選ばれたのかといいますと、
62.0%と最も多かったのが「技術力」、
次いで、
51.5%が「製品・商品の品質」
でした。
つまり・・・“技術力”と“品質の高さ”こそ、
日本を牽引できる特徴であると認識が持たれているようです。
トヨタもソニーも、技術力と開発力で世界を席巻してきた企業です。
だからこそ、
海外でも「メイドインジャパン」や「ジャパンブランド」への信頼は厚く、
ファンも多いといえます。
では、技術を高めるために必要なことは・・・
フォルラン選手の言葉が思い出されます。
~日本人はすべてをパーフェクトにこなそうと努力する~
このパーフェクトを目指す、意識や拘り、
そして、それを成し遂げようとする忍耐力。
これらが、日本人の長所ではないでしょうか。
また、個でバラバラに動くのではなく、
高いチーム力を有し、その力で勝負できること。
技術力とチーム力・・・
これらは、日本が世界に誇れる力でした。
なぜ、「でした」と表現したのかといいますと・・・
育成年代の子どもたちをみていますと、
今ひとつこれが足りないような(意識が希薄な)気がするからです。
技術を身につけるには?
協調性を身につけるには?
育成年代の指導者、
子どもを持つ親は、
子どもたちが将来、堂々と世界とわたり合うために、
日本のストロングポイント を、しっかりと植えつける必要があります。