育成年代に戦術は必要?
AFC U-19選手権バーレーン2016 決勝・・・
U-19日本代表は、大会での初優勝が懸かった試合、
対戦相手は、U-19サウジアラビア代表でした。
会場は、バーレーンのリファーにある、「バーレーン・ナショナル・スタジアム」。
多くのサウジアラビアサポーターが、スタジアムに訪れていました。
日本代表にとっては、正に完全アウェーの状況下、
PK戦の末とはいえ、優勝を果たしたことは、
とても価値のあることだと思います。
そして、国際経験を積む貴重な場である
来年のU-20ワールドカップの出場権(*大会ベスト4以内)を得たことは、
有意義でした。
ところで、
日本は、第40回目となる今大会まで、
一度も優勝をしていないことを皆さまご存知でしょうか?
ちなみにこれまでの優勝回数上位は・・・
1位:韓国 12回
2位:ミャンマー 7回
3位:イスラエル 6回
4位:イラク 5回
5位:イラン 4回
(*対戦国のサウジアラビアは、これまで2回の優勝経験あり)
今回初優勝の日本は、これまで他のアジアの国々に水をあけられていました。
このたび、この年代で念願のアジア№1の座についた日本ですが・・・
近年、育成年代は世界大会に出場できず、
さらに、A代表に若手選手がなかなか上がってこれない状況の中、
改めて
「育成年代について考えなくてはいけない」
と思い、今回のタイトルに至りました。
戦術・・・
昨年度末に、自クラブでも次のような言葉を口にして、
他クラブに移籍していったメンバーがいました。
「〇〇(←近隣の少年団さん)は、実戦的な練習をしている」
ここで、気になる
『実戦的』
という言葉・・・。
気になりますので、本人に聞いてみたくなり尋ねました。
「“実戦的”とは、どのような練習なの?」
それに対しては・・・
「攻撃と守備に分かれて、戦術の練習をする」
・・・ということでした。
話は変わり、
先日、東京五輪に向けたアンダー世代に焦点を当てた、
あるサッカー番組を観ました。
そこで、話題にあがっていたことを、そのまま載せますと・・・
JFAでは
“日本の足りないところ”
“日本の優れているところ”
各年代で共通の課題になっている上記のことを、
摺り合わせをすることを始めたようです。
これまで各年齢の代表チームが、
それぞれ分かれて活動し、
それぞれで完結してしまっていたところを結び、
“A代表に繋げていく”
というながれをつくり始めた
そうです。
そこで、
この番組のMC(*メインキャスター)が、
同調するかたちで
「年代ごとの代表監督によって、違うサッカーをやっていたら、
上(の年齢)にあがるたびに大変ですよね」
とコメントします。
次に、同席した出演者(*元日本代表の方)の中から、
「戦術って、難しいじゃないですか。
4バックであり、3バックであり、
4-3-3、4-4-2、4-2-3-1とか、
そういうものも具体的に(日本のスタイルとして)
決めているんですか?」
という問いが挙がります。
それに対して、
隣に座っていらっしゃった現アンダーカテゴリーの代表監督(元日本代表)が
答えます。
「特に決まっていないですね。
日本の良さというものは、
“コンパクト”にした中で、
“少ないタッチ”でボールを動かしていく
というのが基本だから、
それは、どのカテゴリー(*年齢)でも同じ。
『システムよりも、コンセプト』
・・・
逆に、そこが“日本の弱点”と言われてきたところで、
『システムが変わったら、何もできない』では“ダメ”
で、戦術の柔軟性(*対応する力)というものを、
もっともっと日本人は持つべきですよね」
正にその通りです。
日本人は、やたらとシステム論に話を置き換えたがりますが、
有能なプレーヤーは、
どのシステムでも順応し、
チームの中で機能します。
しかし、
日本人は、やたらと戦術やシステムの話をするのを好み、
育成年代の試合についても、
「あの監督のその戦術が▲▲」
「この選手とあの選手との組み合わせが××」
・・・
まるで戦術家のような話になります。
育成年代に、戦術が全く不必要だとは思いません。
ただ戦術とは・・・
“勝利を求められるプロ”が、監督から指示されるものです。
しかし、個々の
『基本的なボールコントロールが未熟な育成年代のプレーヤー』
👇
●ボールをいつでも蹴ることができるところに置けない
●相手にボールを触られる、奪われる
に戦術を与えたところで、一体何ができるのでしょうか?
そもそも、
「戦術がどうこうと発言する方たちの戦術とは・・・何でしょう?」
戦術について、本当に適切に答えられる方、何人いらっしゃいますか?
また、戦術云々はさておき、
結局、プロであっても、
個(*自分)が強くなければ、
プレーする場も与えられません。
低年齢にもかかわらず、
「戦術や戦い方」など、何やら小難しいことを言う
『大人のような子ども』
が増えてきているような気がします。
それは、
「大人が蒔いた(悪しき)種」であり、
また
「バーチャルゲームに慣れた現代っ子特有の気質」です。
大人が、戦術めいたことを子どもに与えていますと、
周囲(保護者)も満足するのかと思います。
(「サッカーを本気でやっているな」、「専門的だな」・・・など)
しかし、
戦術とは応用であり、
“基礎基本”が確立してこそ、体現できるものです。
〚基礎基本〛
1.サッカーというスポーツを理解していること
2.ボールコントロールが確立していること
3.周囲の状況を把握して、判断してプレーできること
これが足りない中で、たとえ戦術のようなものを徹底して、
目先の試合に勝利したところで、
子どもたちの将来は明るいといえるでしょうか?
操り人形?ロボット?? のような育成年代のチーム・・・
あちらこちらに存在します。
真にサッカーを愛しているからこそ、
悲しい気持ちになります。
現時点で、
身体が大きかったり、運動能力があり、
そして、
大人の指示通りに動く子どもたちでチームメンバーを組み、
勝って喜んでいるチーム、指導者、保護者を観ると・・・
本当に残念で仕方がありません。
大人が子どもをロボットにさせてしまい、
重荷(期待)を背負わせるだけ背負わせ、
目先の試合に一喜一憂しているようでは、
将来はないのも同じです。
育成年代の指導者であるなら、
子どもの将来を本気で考える大人なら、
戦術よりも、
もっともっとやらねばならないことがあります。
それは・・・
個々を上達させ、
プレーヤーとして人間として成長させることです。