印象に左右されず、真実を見極める ~水分補給~
今年もつい先日、この地方でも梅雨明けが発表されました。
この季節、多くの人が気になるのが熱中症です。
汗をかく
体内の水分が減少する
血中のナトリウム濃度が下がる
そこで
水分補給
塩分補給
になる・・・というわけです。
①「暑い(気温が上がってきた)」から
☟
➁「熱中症になるのが怖い」から
☟
➂頻繁に水分を入れる
☟
④プラスして、塩分を口にする
☟
⑤また、効果的だから経口補水液やスポーツドリンクを飲む
・・・
しかし、
本当にこれで熱中症問題は、
解決するのでしょうか?
正しい水分補給とは・・・
運動直前(*約30分前)に数回に分けて飲み、
運動中は、1回につき1口から200ml程度まで(軽く潤す程度がベスト)
運動後には、発汗等によって減った体重分を補う量を、数回に分けて飲む
・・・
まずこの“基本”を知っておく必要があります。
一方、
度を越した水分補給を行うと・・・
低ナトリウム血症を引き起こします。
体内のナトリウムバランスが崩れることで、
水分を補給しているにも関わらず、
熱中症と同じような症状が引き起されます。
“過度な水分補給”が、
血中のナトリウムバランスを乱した結果です。
そして次に、
塩分(ナトリウム)の補給。
そもそも、汗の中にナトリウムが多く含まれているとはいいますが、
例えば、人間の皮膚を含め、
身体は(大切な)ナトリウムを外に出さないように
「血中のナトリウム濃度をコントロールする機能」があります。
ですから、
ただ単に「汗をかいた」だけで、
塩分を補給するという考え方は、
(ナトリウム摂取を)意識し過ぎているといえます。
過剰なナトリウムの摂取は、
激しく、且つ長時間のスポーツで、
先に述べました身体のナトリウムコントロールが間に合わないほどの
大量発汗した場合には、
ナトリウムの補給の必要が出てきます。
しかしそれも、
目安は・・・コップ一杯の水に対して“塩一つまみ”です。
では巷で頻繁に目にする
経口補水液、スポーツドリンクは、
常飲すべきでしょうか?
大手メーカーから発売しています経口補水液(*500ml)には、
食塩に換算しますと約1.5g分のナトリウム
が含まれています。
一方で、
「日本人の食事摂取基準」2015年版においては、
『男性で8g未満、女性で7g未満』
となっています。
つまり、
経口補水液の500mlペットボトル1本を飲むことで、
成人で一日の約2割の塩分を摂取することになります。
次にスポーツドリンクですが、
こちらには、意外なほど“糖質”が含まれています。
糖質は、人間が動き続けるエネルギー源となりますが、
虫歯や肥満の原因にもなります。
虫歯になれば・・・
咀嚼機能が損なわれ、
熱中症に関わりのある、
“栄養補給面”にマイナスに影響を及ぼします。
さらに、肥満になれば・・・
当然のことながら、足腰に負担が掛かり、
運動すること自体が“億劫なもの”になります。
そうなれば当然・・・
全身の筋力、持久力、さらには代謝機能が衰え、
熱中症の足音が大きく忍び寄ってきます。
事実、
『学校管理下の熱中症死亡事故の7割は、肥満の人』
なのです。
他方で、
健康対策のため、
人工甘味料を使用したスポーツドリンクも発売されています。
ただ・・・
まだ完全に解明されたわけではありませんが、
近年、
「人工甘味料でも肥満や糖尿病につながるのではないか」
との指摘もあります。
実際に、
アスパルテームという甘味料を混ぜた水を飲んでいたマウスは、
普通の水を飲んでいたマウスよりも体重が増加し、
メタボリックシンドロームの症状を示したそうです。
また別の実験では、
その後、天然の甘い食品を与えられると、
カロリーを30%多く摂るようになったそうです。
この理由として、
前者の実験では肥満や糖尿病の予防効果がある
小腸型アルカリ性ホスファターゼ(IAP)と呼ばれる腸の酵素の働きを
人工甘味料がブロックすること、
後者の実験では人工甘味料が脳に働いて食欲を増幅させることが、
可能性として示唆されています。
まだ分からない部分も多いのですが、
少なくとも砂糖が入っている飲料は、急激な血糖値の上昇を促しますし、
「余ったカロリーは体脂肪として蓄積される」
のは確実です。
糖の摂取制限に関しては、国際的にも課題に挙がっています。
⇓
2014年3月5日、WHO(World Health Organization)は、
砂糖摂取に関するガイドライン草案に関する公開協議を開始。
最終段階でのガイドラインは、
肥満や虫歯などの公衆衛生上の問題を減らすための
“糖の摂取を制限するための勧告”を各国に提供。
新ガイドライン案は、
1日あたりの総摂取量の10%未満であるべきであると提案しています。
さらに、
『1日あたりの全エネルギー摂取量の5%以下に減少することは、
さらなる利益をもたらす』
※総エネルギー摂取量の5%は、成人の体格指数(BMI)が成人の場合、
1日あたり約25グラム(約6ティースプーン)の砂糖に相当します。
ことを示唆しています。
つまり・・・
総合的に
深く掘り下げて考えた場合、
水分を摂る
塩をなめる
経口補水液やスポーツドリンクを飲む
ということを行ったからといって、
『熱中症の根本解決にはならない』
ということです。
製薬、飲料メーカーの皆さまには大変申し訳ないのですが、
巷では熱中症対策という理由で、対処療法的な広告が多すぎるような気がします。
マスコミも根本解決ではなく
熱中症を煽るだけになり、
ズレた情報が氾濫しているように感じます。
自クラブで、
“適切な頻度”
“適切な負荷”
そして
“適切な水分補給”
を取り入れ
『トレーニングを継続している』子ども
は、つい先日まで園児だった小学校1年生であっても、
真夏の気温の高い時刻に活動しても
熱中症にはなりません。
その秘密(理由)は、
先にも述べましたような
『熱中症の原因』
を熟知した上で
対処療法のような消極的な手段ではなく、
“積極的な対処方法”を講じているから
です。
「病気にならないこと」
「ケガをしないこと」
話の枠を広げますと
「“成長痛”にもならないこと」
・・・
それが一番良いことのはずです。
医療関係者の方は、
「これでは(この考えが広まれば)立ち行かない・・・」
と考え込んでしまうかも知れませんが・・・
本当に大切なことは、
必要以上の無駄なお金をかけず
さらに・・・
極力、痛みや苦しみがなく
健康で楽しくスポーツライフを過ごせること
ではないでしょうか?
話は熱中症に戻ります。
「水を飲むな」
という時代が、この日本では長く続いていましたが、
これはなぜでしょうか?
日本のスポーツ界で、
水分補給の重要性が浸透したのは、1990年代以降です。
「スポーツ活動中に水を飲むな」
が長く常識でした。
そのような時代は、
例えば、水を入れた牛乳瓶を物陰に隠したり、中には土に埋めたりして、
監督の目を盗んで飲んでいることも・・・あったようです。
水分補給を禁じる風潮は、旧陸軍の影響が強いといわれています。
▶戦地の水には、食中毒や敵がまいた毒の危険性がある
▶行軍中に飲用水を運ぶには費用がかかる
そのため、
水を飲まない訓練をさせられた兵士たちが戦後、
体育教師や指導員となり
「水を飲むな」
と指導したことが、
長らく“スポーツ界のルール”になってしまったと考えられています。
さらにそこに
「余計に疲れやすくなるから」
「横腹が痛くなるから」
などの噂がイメージとして定着し、
さらに加えて
スポーツ科学という分野や考え方が身近に無い時代に
根性論だけが前面に出て、
『水を飲むな』
に拍車がかかりました。
指導者も
「甘い顔はしない方が子どものため」
などという考え方もありました。
大半のことは
「我慢をせよ!」
で、子どもたちは虐げられてきました。
時は流れ
一方、現代の子どもたち・・・
サッカーの練習中や、練習後に何を飲んでいるでしょうか?
おそらく、大人の働きがけによって、
やたらと水分補給を行い
さらに水筒にスポーツドリンクを入れて、
それを常用している子を多く見かけます。
テレビに映るプロアスリートが、
試合中に何か色のついたドリンクを飲んでいるので、
身体を動かす場面では、
「スポーツドリンクを飲むのが最適」
と世間一般が、勘違いしてしまっているように感じます。
確かに、
その飲み物はミネラル分や糖質も含まれ、
運動を継続するのに役割を果たす
“スペシャルドリンク”ではありますが・・・
(*理由は、先に述べましたように、アスリートの運動時間、強度からです)
しかし、試合中・・・
多くのアスリートは主に“水”を飲んでいます。
その証拠に・・・
ボトルから何かを飲んだ後、
それ(内容物)を頭や顏にかけている場面を見かけませんか。
もしこれが、
スポーツドリンクであれば・・・
気持ち悪くて仕方がありません!
育成年代の子どもたちが、
健康のため、
また
さらなる競技力向上のために
スポーツを行っても、
その際、
糖質充分の飲み物を飲んでいては、
運動後の食事が充分に摂れなくなることも考えられます。
身体をつくる『バランスのとれた食事』が
子どもたちにとって大切なものです。
その食事こそが、
丈夫な身体をつくり、
熱中症にも対応できるようにもなる“糧”
になるのです。
さらに・・・
試合開始のホイッスル直後のコーナーキックで・・・・・・
今さっきロッカーから出てきたばかりのプレーヤーが
いきなりボトルを手に取り、水を摂る場面も見受けられますが・・・・・・・・・
気分転換?
それとも
戦略??
はたまた
ルーティン???
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
子どもたちは、
単純に感化されないで欲しいです。
それは感覚だけで水分を身体に入れることにより
運動誘発性の低ナトリウム血症で
身体や足が動かなくなる可能性を秘めているからです。
見た目や印象に左右されることなく、
『どのような目的で』
“何”
を
“どれだけ”
『自分に取り込むのか?』
これを
“子ども自身が線引きできる”
ように
『大人が躾ける』
ことが大切
だと私は考えています。
子どもたちは放っておけば、
イメージや噂に簡単に左右されてしまうものです。
それは
“技術”は、勿論
「振る舞い」
や
「服装」
に至るまで
全てのことに当てはまります。
だからこそ・・・
繰り返しますが
大人がイメージや噂に左右されず、
正しい知識を持って
子どもたちを導いていく必要があるのです。