アレグラン渡部のサッカーの素

愛知県東海市のスポーツクラブ "アレグラン東海” の代表の渡部貴朗が、自身のサッカー観を中心に、スポーツ、教育など気になることを素直に書いていきます!

技術革新は何をもたらす?

スポーツ業界(*自身の場合は指導職)に属しておりますと、

 

サッカー人にとっては、

新しいサッカー用品、

特にシューズは気になります。

 

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シューズは、

プレーヤーのパフォーマンスに直接影響を及ぼしやすいので、

各社とも年々進化を続けています。

 

 

自身がサッカーを始めた頃、

 

現在隆盛を極めるNIKEは、ほとんど見ることはなく、

 

“海外ブランド”は、

 

adidas、PUMAのほぼ2つ。

 

 

もっぱら、サッカー少年の足下は、

 

国内ブランドのものでした。

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その中でも天然皮革製品は、

高級モデル(高価)のため手が届かず、

 

人工皮革製品、

中でも比較的安価なクラリーノ表皮のシューズを履いていました。

 

ただ、

その革は分厚く、

“素足感覚”というものなどはありませんでした。

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しかし、

 

頑丈なため、大部分の日本の土グラウンドでは長持ちし、

さらに雨にも強いため、助かっていました。

 

柔軟性はあまりないクラリーノではありますが、

使いこなしていくうちに、

 

次第に自然に足に馴染んできて、

時間の経過とともに愛着もわいてきました。

 

 

稀に一部、カラー表皮のモデルもありましたが、

 

当時のサッカーシューズのほとんどの色は

 

『黒』

 

でした。

 

 

天然皮革が買えるようになったら、

 

毎回、汚れを落とした後は、

クリーム(靴墨)で手入れをしました。

 

天然皮革は、人工皮革に比べると、

軽くて柔らかく、

その“足入れ感”に驚かされました。

 

使用と手入れを繰り返すと、

(既製品が)正に

 

“自身の足の形”

 

になっていきました。

 

 

ただ・・・

 

上級モデルのカンガルー革、

 

牛皮でも上質な革(*例えばカーフ)になると値は上がり、

 

なかなか手が届きませんでした。

 

 

 

あれから時は流れ・・・

 

現在は、天然皮革よりも人工皮革製品が増え、

 

それに伴い、奇抜なカラーシューズも増えました。

 

子どもの頃、当たり前だった『黒』を見かけることは・・・

 

レフェリーシューズぐらいになりました。

(*どのメーカーからも黒は発売されていますが、カラーが主流です)

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注目したのが、

 

進化した人工皮革の足入れ感の良さです。

 

 

天然皮革こそ、軽くて柔らかい表皮だと思っていましたが・・・

 

近年、上級モデルに採用されています

 

マイクロファイバーレザー』

 

“軽さ”、“しなやかさ”には、声を失うほどです。

 

 

さらに人工皮革のため、

 

雨にも強く、(汚れ落とし程度で)手入れもほとんど不要。

 

 

人間の知恵と技術には驚かされます。

 

 

 

 

さて、前置きが大変長くなりましたが、

 

今回のタイトルは、

 

シューズの表皮の変化(技術革新)が、

 

手入れの時間をなくし、

 

雨で革が重くなったり、傷んだりすることがなくなり、

 

助かった・・・

 

ということが主題ではありません。

 

 

むしろ・・・

 

心配なことがあるのです。

 

 

「手入れがいらない」

 

「雨や汚れの心配がいらない」

 

それは、

 

“シューズへの愛着”

 

ひいては、

 

“物を大切に扱うこと”

 

が、薄れてきていはいないか?

 

と心配になることがあります。

 

 

さらには、

 

各メーカーとも・・・

 

技術を助ける“装置”を搭載するようになりました。

 

技術を助ける装置?とは、

 

具体的には、

 

人工皮革の進化と共に、シューズのアッパー(表皮)に加工が施されるように

 

なったことです。

 

 

記憶の中で、最も驚愕したのは、

 

今から20年以上前の1994年。

 

 

adidas社が世に送り出した“プレデター”が登場した時です。

 

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遡ること1994年から4年前の1990年。

 

イタリアW杯でゴール数が少なかったため、

 

「よりたくさんゴールを量産するスパイクの開発」

 

国際サッカー連盟FIFA)からadidas社へ要請があり、

 

1994年のアメリカW杯へ向けて開発されたのが、

 

初代「プレデターでした。

 

 

アッパーにフィン形状のラバーを搭載し、

 

より大きなパワーや急激なカーブをもたらしました。

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それから20年・・・

 

毎回進化を繰り返し、

 

2014年のブラジルW杯前に、

 

14代目の「プレデター インスティンクト」が発表されました。

※この時点まで展開された「F50」「プレデター」「ナイトロチャージ」「11プロ」という4サイロは廃止。   

   プレデター」は20年で、一旦幕を閉じました。

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当初は靴の甲全面に装着されていた大きな突起(フィン形状のラバー)は、

代を経るごとに修正。

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adidas社の説明では、

 

“より強いパワー”

“より正確なコントロール

 

という

 

「2つの相反する要素に対する答え(改良)」

 

ということです。

 

 

プレデターシリーズの基本コンセプトは、

 

そもそも、

 

なかなか得点の入らないサッカーという競技の中で、

 

「いかにボールを操るか」

 

という命題に対してのひとつの答えで、

 

その具体的な方法として

 

シューズのアッパー部分にゴム製のパッチを装着して、

 

ボールにより強い回転(摩擦)をかけることがねらいのようです。

 

 

 

そして先月、

 

数名の日本代表選手も着用しています国内メーカーからも、

 

最先端の機能を搭載したシューズが登場しました。

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 MIZUNOが送り出したシューズ、“レヴュラ”です。

 

 

その最大のウリは、

 

アッパー(表皮)内部に搭載されたフレーム形状のメモリーフォーム。

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 『低反発素材』が、

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 ボールのコントロールを助ける仕組みです。

 

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時代の流れと共に、

 

サッカーシューズは格段に進化を遂げました。

 

 

この後、どのように発展・進化していくか・・・

 

気になるところでもあります。

 

 

 

このたび紹介しましたのは、

 

2つのメーカーのみでしたが、

 

どのメーカーも挙って、

 

「機能的、デザイン的に購買者が興味関心を惹く」

 

各種モデルを世に送り出しています。

 

 

ここでの紹介は、割愛させていただきます。

 

 

 

しかしここで冷静に考えてみたいことがあります。

 

 

サッカーは、

 

“蹴球”

 

とも書きます。

 

 

では、

 

『誰』が

 

『何』で

 

球(ボール)を蹴るのでしょうか?

 

 

それは、

 

“人間”が

 

“自分の足”で

 

ボールを蹴るのです。

 

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勿論、

 

ボールを止めるのも

 

ボールを運ぶのも

 

“自身の足”です。

 

 

 

自分の足はどうなっているでしょうか?

 

硬い骨で形成されています。

 

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例えば、

 

ボールを止める(ボールの勢いを吸収する)

 

には、

 

骨があるため“硬く”

 

『ボールを止めるのには、そもそも適していません』。

 

 

そういえば・・・

 

子どもの頃、上手にボールを止めるには

 

「カーテンのようになる」

 

と言葉がけされました。

 

???

 

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人間の足は、

 

このように、ヒラヒラしていますか??

 

 

・・・・

 

していません!

 

 

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やはり硬いです。

 

 

ただ・・・

 

数多くの骨のパーツで組まれているため、

 

“固定”をしなければ、グニャグニャです。

 

 

一方、

 

多くの関節があるため、

 

いろいろな角度への調節が可能です。 

 

 

だから・・・

 

素足であっても

 

「ボールをコントロールすることができる」

 

のです。

 

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重要なことは、

 

自分の足をボールに対して調節することなのです。

 

 

足で受け皿をつくり、

 

さらに、

 

反対の足(立ち足)で軸をつくって、

 

その立ち足で“ボールの勢いをコントロールする”こと

 

が大切なのです。

 

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結局・・・

 

ボールをコントロールする(*この場合止める)のは、

 

『自身の足』

 

なのです。

 

 

 

「シューズではない」のです。

 

 

シューズの機能に助けられてボールをコントロールするのは・・・

 

真に

 

「ボールをコントロールした」

 

と言えるでしょうか?

 

 

サッカーから少し離れて・・・

 

日常生活も機械技術の進歩により、

 

とても便利で、一見快適になったように感じませんか?

 

 

その反面、

 

人間は工夫をする、努力をするといったことが

 

面倒くさくなっていませんか?

 

 

「自分で何とかする」

 

「自分の力でできるようにする」

 

それが本当の技術であり、

 

工夫や努力の末、成し遂げたからこそ、

 

達成感、そして自信がつきます。

 

 

サッカーは、

 

歩く、走る、時に自転車のペダルを漕ぐなど

 

普段は、“単純な運動”しかこなさない

 

『足』

 

で行うスポーツです。

 

 

ですから、

 

そもそも(慣れないことを強いられるため)難しいものなのです。

 

 

で、一方、

 

その難しいことを、いかに正確に行うかが課題なのです。

 

 

それを可能にするのが、モノ(例えばシューズ)であるなら

 

・・・

 

それは本質からズレているように感じます。

 

 

 

人間には力があります。

 

とてつもない可能性を秘めています。

 

 

だから、その生身の人間が行うから

 

例えば、

 

Cirque du Soleilシルク・ドゥ・ソレイユ)を観ると

 

その素晴らしさに人は感動を覚えるのです。

 

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そこには、

 

鍛えれた肉体と研ぎ澄まされた感覚があります。

 

 

今回の記事で伝えたいこと・・・

 

それは

 

最新技術を搭載したシューズの批判

 

 

各メーカーの技術者や企画担当者の方々の努力を否定する

 

といったものではありません。

 

 

機能を搭載したシューズは、

 

自ずと上級モデルになりますので、

 

テイクダウンモデル(*サイズの小さいジュニアモデル)にその機能は、

 

ほぼありません。

 

レビュラですと、CTフレーム(低反発素材)の搭載モデルは、

 

V1 JAPAN,V1,V2の、3モデルのみ(size 24.5~29.0cm)。

 

外見はそっくりのジュニア版(size 19.0~24.0cm)は、

 

“デザインが同じ”であるだけです。

 

 

その傾向は、大凡どのメーカーも同じです。

 

 

ですから、

 

「ジュニアモデルは(シューズの機能に頼れないので)心配はないのでは?・・・」

 

と考えてしまいがちですが・・・

 

 小学校高学年辺りから、

 

身体の大きい子は、成人サイズのシューズを履き始めます。

 

 

基礎技術が拙い

ボールがコントロールできない

ボールコントロールを助けてくれるシューズがある

有名プレーヤーも履いている

これを履けば大丈夫だ!

 

ということになれば・・・

 

「正しい基礎技術は、いつ習得するのでしょうか?」

 

 

小学校高学年から中学校の時期は、

 

それまでの年代と比べると、

 

意識がはっきりとしてきます。

 

 

だから、

 

『何の目的』で

 

『何を意識』して

 

このトレーニング行うかということは、

 

本人がしっかりと認識できるようになります。

 

 

つまり、

 

それまで意識が散漫だった子どもも

 

動機がはっきりしてくるため、

 

反復練習も効果を見せ始めます。

 

 

しかし、この良い時期に、

 

道具に頼り始めると・・・

 

基礎技術はいつになっても身につきません。

 

 

自論ですが、

 

真のサッカーの技術を習得したいのであれば、

 

「素足」

 

または

 

「素足に近いシューズ」

 

でトレーニングをするべきです。

 

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技術革新が、プロアスリートにとって

 

「紙一重」

 

という差を埋めるものであるならば、よいのですが・・・。

 

 

未完成な子どもの

 

“便利な道具”とはならないかと

 

危惧するばかりです。

 

 

繰り返しますが、

 

技術とは、

 

自分の肉体と感覚のコントロールの産物です。

 

 

本物は、そのポイントを知っています。

(身体が覚えています)

 

 

ですから本物は・・・

 

どんなシューズを履いていようと

 

ゴールを決めることができます。

 

youtu.be

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