【短編】夏休みに想う・・・ ~毎日は繰り返し~
小学校の夏休みも、残り一週間をきりました。
夏休み・・・
「宿題がなければな・・・」
と、自身も子ども時分は毎年そう思っていました。
そしてこの時期(8月下旬)は、
地獄でした。
「早く終わらせた!」
という友達が
羨ましく、妬ましく
・・・
そして、
先の言葉を口走り(愚痴り)ながら、
渋々、読書感想文、ポスター描きなどに取り組んでいました。
時は流れ、
今は人を教える立場になりました。
怠け者の自分が、
今度は人に諭すことをしています。
教え子の中には、
“賢い”
“集中力のある”
子どももいます。
そのような子の中には・・・
「8月は目一杯遊びたいから
夏休みの宿題は、
7月中に全て終わらせる」
ということを実際に実行する
“猛者”
がいます。
それができればいいのですが・・・
普通は
「まあいいや・・・」
「時間はまだたっぷりあるから・・・」
といった安易な気持ちに流され、
あれよあれよという間に
8月下旬に突入するものです。
ところで、日本には長期の休みである
夏休みがなぜあるのでしょうか?
この問いについて、
明確に答えることができる大人は、
何人いるでしょうか?
各教室に空調が整備されていないから?
(長期期間内で)新しい挑戦をするチャンスを与えたいから?
・・・
などが一般的な理由として挙げられてはいますが、
とにかく約40日間も与えられた休みを子どもたちは、
本当に有効に使えているでしょうか?
先日、
お盆休み明けの子どもたちに尋ねました。
「休みの間、もし今学校に行っていたら、何時間目を過ごしているな、
と一度でも考えた人」
・・・
手を挙げた子どもは
“0”
でした。
つまり、子どもたちは、
休みを良くも悪くも満喫し、時間すら忘れているのが現実でした。
少し、新学期がくるのが心配になってきました。
(まあ、何だかんだ言って、2学期が始まれば直ぐに慣れるのでしょうが・・・)
「“勉強”は?」
という問いに
「(夏休みの)宿題は、ほぼ終わったよ」
という声が多く聞こえました。
優秀です。
ただ・・・
“勉強”は、毎日やるものではないでしょうか?
宿題を早く済ませることは良いのですが、
それで
「“勉強”をする必要がない」
わけではありません。
それは、
小学生、中学生の時期は
生きるために必要な“基礎学力”を身につける大切な時期、
「義務教育期間」
だからです。
勉強、サッカーに限らず、
『基礎の習得』
は絶対に必要なことです。
基礎の確立・・・
それには、繰り返しの方法しかないと、私は考えています。
ドイツの心理学者、ヘルマン・エビングハウスの「忘却曲線」は、
あまりにも有名です。
ここで、人間の記憶についておさらいをしてみましょう。
記憶には、実は種類があります。
新しい情報は、全て一度脳にインプットされます。
この、脳にインプットされたばかりの状態が、
「短期記憶」と呼ばれるものです。
反対に「長期記憶」は、
長期間保持される記憶で、何十年でも覚えていられます。
「なぜ、一度覚えたこと、経験した忘れてしまうのか?」
については諸説あります。
基本的に思い出す頻度が低い記憶、
また他の記憶との関連性が無い記憶などは、
自ずと忘却が起こりやすくなります。
そして中期記憶というものがあります。
短期記憶と長期記憶の中間ともいえる記憶で、
短期記憶の中で消去されなかった記憶を、
“一時的に保管している”かたちの記憶です。
この中期記憶の中から取捨選択された記憶が、
結果、『長期記憶』として定着するといわれています。
ではこの中期記憶ですが、
20分後には42%を忘却し、58%を保持
1時間後には56%を忘却し、44%を保持
1日後には74%を忘却し、26%を保持
1週間後(7日間後)には77%を忘却し、23%を保持
1ヶ月後(30日間後)には79%を忘却し、21%を保持
・・・といったようなデータが示しますように、
『人間は一日経てば、かなりのことを忘却してしまう』
特徴があります。
では反復しなければ・・・
悲しいかな、一度経験した事柄、教えてもらった事柄は、
どんどん忘れ去り、その跡形さえも消えてなくなる可能性があるのです。
だから
反復が必要なのです。
つまり、刷り込みですね。
では、整理してみましょう。
➊何かを学ぶ時、その内容があなたにとって意味のないものであれば、簡単に忘れる
・・・トレーニングには、その意味(裏付け)が大切
➋学習に時間をかけると、吸収できる情報量も増える
・・・質より量というやり方は薦められないが、やはり“練習量”は必要
➌一度目の学習より、二度目以降の学習の方が簡単になる
・・・復習を重ねることにより、忘れにくくなり、難しいこともこなせるようになる
❹一度にたくさんよりも、時間をかけて何度かに分けて学んだ方が、学習効率は上がる
・・・一つのものを上達させためには、繰り返しが大切
❺学習直後から忘却が始まる(記憶は一気に無くなり、次第にゆっくり失われる)
・・・記憶が失われないうちに、再度トレーニングすることが必要
ただ単に
宿題・・・
ということだけであれば(短期集中処理でも)良いのですが、
勉学・・・
ということになれば、8月を丸々遊ぶことは、
義務教育期間では、大きな問題になります。
中学卒業の先の将来のためにも、
“基礎学力”は、確実に身につける必要があります。
これを将来のサッカーという考え方に置き換えてみますと・・・
“基礎技術”は絶対に身につけないと、
「プロサッカー選手になること」など儚い幻となります。
(*まず小学校卒業から後の、「スピード、パワーが強いプレー環境」についていけなくなります)
とにかく人間は、
子どもも大人も「人生」という道のりを歩み続けています。
一年は、一日、一日の積み重ね。
人生は、一年、一年の積み重ねで、
成り立っています。
大切なことの繰り返しが、
この先の自分自身をつくっていきます。