育てるのこと自体がエネルギーがいるもの ~対面パスを例に~
いきなりですが
・・・
「子どもを育てることが嫌になりました」
・・・・・・
この一言は、
ここで書くのはお恥ずかしい話ですが、
過去に自クラブをお辞めになられた方から発せられた言葉でした。
人間を育てることは大変です。
親の一人として痛いほど分かります。
「辛さ」、「もどかしさ」
などの嫌な気持ちから目先を変えて
楽しい子育て理論にすがったり、
(子どもの現実を)見たくないから放任、放置したり・・・
しかし、どちらも根本解決にはならず・・・
一方、
時間の経過と共に、子どもはどんどん成長して思春期(反抗期)に突入。
気づいた時には、
残念ながら手に負えない状況になります。
実は、育成年代のサッカーの指導も全く同じ現実があります。
大人は子どもに
いろいろ働きがけや言葉がけを行いますが、
結果は簡単には出ません。
落胆させられる毎日に、
(*仮称)「これで効果アリ」
のような書籍やネット情報に出くわし、それを導入しようとします。
また、
「(子どもの)イマジネーションを削いではいけないので自由にさせよう」
というような風潮もあります。
だから・・・
なかなか理解が進まない年齢の子どもに対して真剣に向き合うのは、
いろいろな意味で
「疲れるだけ」
になり、
“元を正す”
ことや
“課題にピンポイントに向き合う”
ことはなくなり、
子どもは適切な躾を施されないまま、
大人へと成長していっているのが現実です。
しかし、繰り返しますが、
人間を育てるのはそもそもエネルギーがいるものです。
例えば、今回ひとつ取り上げたいのが
対面パス。
対面パスは・・・
国際試合の前にも
国内のプロチームのトレーニング内でも
世界有数のプロチームにおいても
普通に行われています。
一方、
対面パスが苦手、正確にできない
となると
サッカーはできないわけではありませんが、
ボールを止める、蹴るが不完全なまま試合に出場しますと・・・
プレー面で大きな支障を来すことは間違いありません。
しかし、
一般的に子どもたちは、
対面パスの練習を好まない傾向にあります。
その理由は、これまでの現場での経験上、
次のような理由の存在があります。
❶単純だから(飽きるから)
❷ボールを持つ方(*ドリブル)が面白いから
➌ボールの動きが読めないから
❹身体(足)がつくれないから
・・・
理由❶と❷は、簡単です。
単純に、
子ども独特の“わがまま”
です。
理由➌と❹は、
子どもの身体を動かす“環境”
に問題があります。
では、もう少し深掘りしてみましょう。
❶と❷について
「わがまま」
と言ったのは、偏った表現にはなりますが、
「分かり易い」のではないかと思い、
敢えて用いました。
『面白くないから・・・』
面白いことばかりで、上手くいくわけがありません。
面白いことばかりやっていて、
「難しいこと」
「集中力を出さないとできないこと」
を避けていては、
大切なものを得ることはできません。
身体づくりを担う、食事も同じです。
好きなものばかりを食べていては、
栄養に偏りが生じます。
そして、身体は大きく成長できません。
現代っ子の物事に対する考え方について
改善を図る必要性を強く感じます。
そして、
育成年代でドリブルが大好きなチーム・・・
多々ありますね。
日本では、
ドリブル自体が“個人技”と置き換えられ、
「それ(ドリブル技術の向上)こそが育成の柱である」
と“誤認”している大人が多いからではないでしょうか。
中には、指導者の指示で
パスを禁止(*パスをするならショートパスのみ)としているチームもある
ほどです。
しかし、
サッカーは個人技術は絶対に必要ですが、
一人で行うものではなく、
“チームスポーツ”です。
どこまでもドリブルをする
ボールを離さない
つまり、
独りよがりなプレーは、
その本人にとっては楽しいでしょうが・・・
では、周囲の味方プレーヤーは?
一体、何の楽しみ、役割があるのでしょうか??
「どのような場面もパスをすべき」
というわけではありません。
サッカーのゲームにおいて、
ドリブルが大きな力であることは
自身も充分理解しています。
ただ、独りよがりなプレーは、
チームスポーツの概念を逸脱しています。
あくまで私の経験ですが・・・
“独りよがりなプレー”を「個人技が高い」と称賛しているチームの
試合会場などでの(指導者、子どもの)姿は・・・
残念ながらマナー(*諸々の振る舞い)があまり良くありません。
例えば、
▲キックターゲットのように、施設のネットに向かってボールを蹴る
▲休憩場、駐車場でも、場をわきまえずドリブルやリフティングをする
▲指導者が子どもが活動する場にも関わらず、タバコを吹かす
・・・
といった行為です。
自己を優先する指導、環境が
『周囲を観る』、『調和をとる』
といったサッカーの場面ではもちろん、
ピッチを離れた場所でも重要となる行動面に
問題が出ているのは明らかです。
➌と❹については、
人間の内部(脳、神経、筋肉)の事柄になります。
➌(ボールの動きが読めない)の理由に挙がるのは、
『空間認識能力』というものです。
つまり、
狙った場所にボールを当てることや、
飛んでくる(転がってくる)ボールを掴むことなどの感覚のことです。
そういえば最近、
公園で、友だち、親子でキャッチボールなど・・・
あまり見かけなくなりましたね。
動くボールに対して身体を合わせることが
現代っ子は明らかに苦手になっています。
❹身体をつくるとは、例えば身体の部位を固定することです。
インサイドキックを例に挙げます。
蹴り足のつま先は上に向けて、
膝は外側に開く必要があります。
これにより
蹴り足の足首から下の部分に正しい面ができ、
ボールを正確にとらえることが可能になります。
これらは、明らかに日常では行わない動作(姿勢)です。
日頃から積極的に身体を動かし、
足首や膝に指令を届け、
「下肢の各関節を固定する筋肉が適宜収縮可能な状態」
になる必要があります。
ボールを飛ばすには、身体の力を確実にボールに伝えることが大切です。
体幹 ➡ 大腿部 ➡ 下腿部 ➡ 足部 ・・・
力がスムーズに伝わり、
“脚が一つ”となり『大きな機能』を果たせた時、
ボールは自分の意思通りに動いてくれます。
とにかく
子どもたち自身が感覚、身体を能動的に使う機会が、
日常の中で少なくなっている状況の中、
動くボールを正確に止める、蹴るということは
大変難しい課題であるのは事実です。
❶~❹の理由から
対面パスの練習は、敬遠されがちなものであるような気がします。
しかし、
サッカーの対面パスとは
見方を変えますと・・・
野球のキャッチボールと同じである
といえるのではないでしょうか。
投手はもちろんですが、野手にも同様のことが求められます。
向かってきたボールを受ける
狙ったところに投げる
この基になるのが
『キャッチボール』。
では一方で、
キャッチボールができない野球選手・・・
想像できますか?
サッカーに話を戻します。
向かってきたボールを止める
狙ったところに蹴る
つまり、
対面パスがきちんとできないサッカープレーヤーは、
“あり”でしょうか?
サッカーを始めた頃は
このボールを止めて蹴るがなかなか上手くできません。
つまらないので、
子どもたちは、自ずとゲーム(試合)形式の活動ばかりを望みがちです。
また先にも説明しましたように、
近年、五感と全身を使って遊ぶことが少なくなっている子どもたちに
対面パスをさせることは、とても苦労します。
ただ、
子どもの将来を願い
大切な基礎基本を身につけるのは
育成年代です。
この癖づけの時期に
どんな大人に会ったのかによって、
子どもの将来は決まるといっても過言ではありません。
人間を育てることには、エネルギーがいるものです。
▶面倒だからやめますか?
(育てることをやめたら、子どもは誰に育ててもらうのでしょうか?)
▶誰かが「放っておいてもいいんじゃない」と言ったら合わせてばかりですか?
(誰かの子どもではなく、自分の子どもではないでしょうか?)
▷対面パスは低年齢(*10歳以下)は、やらなくても良い内容でしょうか?
エネルギーが掛かるから手を付けない、踏み込めない
その中に大切なことが含まれていても・・・
面倒だからと言って、
子どもを放っておけますか?