フィジカル
フィジカル
・・・
先日の
日本代表対サッカー強豪国との国際親善試合の場面でも
その言葉が思わず脳裏をよぎる場面に出くわしたことかと思います。
しかし・・・
この頻繁に用いられる
「フィジカル」
という言葉・・・
本当はどのような意味があるのでしょうか?
きちんと説明できますか??
すでに来年のワールドカップに日本は出場を決めていますが、
このW杯アジア最終予選のさなか、
約1年前のインタビューの際にも、
ハリルホジッチ監督は、"フィジカル"を大いに語っています。
8月25日のロシアワールドカップ・アジア最終予選のメンバー発表会見の席・・・
約3か月に渡ってスタッフ総出で準備してきた
日本サッカーの「アイデンティティ」についてまとめた冊子と、
プロジェクターを用いて、日本サッカーや選手への課題を述べました。
(本気でデュエルを向上させる気持ちを持たなければならい・・・とデュエルの必要性を説いた上で)
「そのためにはトレーニングしかありません。
筋力を強化するには頭での理解も大事です。
本気でデュエルを向上させる気があるのか。
"フィジカル"とメンタル、両方からアプローチをすべきです」
※デュエルとは決闘を意味します
そして
「クリスティアーノ・ロナウドの写真を見たことがありますか?
世界で一番、良い選手です。
リオネル・メッシはどうでしょう?
小さくても、かなり筋肉があり、すごく力強い」
さらに
「EUROでは、アイスランド代表の戦いぶりが見事でした。
日本よりも力が劣ると見なされていますが、"フィジカル"が全然違う。
日本が試合をすれば、おそらく負けるでしょう。
ハイレベルな舞台で戦いたければ、
まずはアスリートになれと、私は常に言い続けています」
➠その後、アイスランド代表は、2018 W杯欧州予選グループIを首位通過でW杯初出場を決めました。
ハリルホジッチ監督にとって、デュエルの強さはいわば基本。
そこを改善できない場合、
「我々は“プレーできません”」
と断言しています。
そのデュエルの源になるのが、
"フィジカル"。
●局面での"フィジカル"の差が顕著に表れた
●この合宿は"フィジカル"トレーニングがメインだ
●ボール回しなど技術面は良いが、"フィジカル"面で劣る
あまりスポーツを知らない人でも
"フィジカル"は、
よく耳にする「カタカナ言葉」かと思います。
ことさら日本代表に関してのニュースでは、
よく耳にします・・・。
フィジカルとは、
英語では「physical」。
「肉体的・物理的」
という意味です。
フィジカルを強化するとは・・・
「肉体面を強化するプログラム」
ということになりますので・・・
「フィジカルが強い」という使い方であれば、
ただ単に・・・
「肉体的なパワーが強い」
という意味に"なりがち"です。
つまり・・・
フィジカルが強いとは、
(分かり易く例えると)筋骨隆々の身体である
ということに"なりがち"です。
なぜ"なりがち"と強調したのかといいますと・・・
それらは、あながち間違いではないのですが、
ややもすれば、
大きな誤解を招く恐れがあるので、あえて強調しました。
ところで、
今から30年ほど過去の話になります。
ゼロックス・スーパー・サッカー(Xerox Super Soccer)は、
日本サッカー協会主催、富士ゼロックス特別協賛で開かれたサッカーの国際大会で
主に日本代表と世界の有名クラブチームとの間で対戦が行われました。
1979年に第1回が開催されて以来、世界のトップクラブや世界の一流プレーヤーを
日本に招き、日本サッカーの強化と国際親善の実現に貢献した大会ですが・・・
海外のスター選手を招き試合をする、興行色が強い企画であったことは否めません。
そのような(*興行的な)雰囲気の中
1998年に来日したSSCナポリには、本当に驚かされました。
前シーズンと翌シーズン(*1986-87, 1989-90)
当時、世界最高峰といわれたイタリア1部リーグ、
その主軸となったのは、この2人。
ブラジル代表のエースストライカー、カレカ(カレッカ)選手
と、
誰もが知っている
アルゼンチンの英雄、ディエゴ・マラドーナ選手
南米の2大強豪国のスターを要する攻撃陣は、
正に"破壊的"でした。
この試合(ゼロック・スーパーサッカー88)で、
ボールを持つマラドーナ選手にチャレンジした日本代表の選手は
試合後に次のようにコメントしました。
「まるで岩のようだった」
そして、
今から約10年前の2006年のW杯、ドイツ大会。
日本サッカー屈指の中盤を擁し、
「(日本代表)史上最高」
との呼び声高い選手たちで構成された日本代表が
挑んだブラジル代表戦。
玉田選手のゴールで先制したのも束の間、
セレソンが日本代表に牙を向きます。
終わってみれば、
1-4で大敗。
「ついに日本は強豪国の仲間入りを果たしたのでは・・・」
と感じていたところで、突きつけられた厳しい現実。
当時の日本代表の選手たちは、ブラジル戦後のインタビューで答えていました。
「"フィジカル"で全く歯が立たず、何もできなかった・・・」
と。
『歯が立たない』
と感じた敗戦から11年・・・
先の国際親善試合、日本vs.ブラジル
同じ感想を持ってしまったのは私だけでしょうか?
Jリーグが生まれて約四半世紀。
ワールドカップも、アジアの代表として出場するのが常となった今日の日本。
しかし、
強豪国と対戦すると露呈する同じ課題。
私は、先日のブラジル代表との試合は、
11年前の2006 FIFAワールドカップ対ブラジル代表の試合
と
全く重なってしまいました。
「日本サッカーは、あまり進化していないのでは?」
とさえ思えてしまうのです。
ボールを奪えない
ボールの動き、相手のスピードについていけない
のは・・・
『一般的なフィジカルの強さ』
が、問題なのでしょうか?
フィジカルとは・・・
筋肉の量(太さ)?
どうやら違うような気がしませんか?
そのような単純な目で分かる筋肉の様子(*例えば肥大具合)だけではなく、
『身体の使い方』
や
『動作の仕方』
そして、
『バランス能力(それを助ける筋力)』
が
強豪国のプレーヤーと大きな違いがあるように感じます。
◎「相手からボールを奪われない身体の向きを速やかにとる」その動き
◎「相手をかわしたり、カウンター時に瞬発的に動く」ために必要な姿勢
◎「身体接触をした際に圧力を受けても崩れない」力
・・・
これらを「フィジカルの違い」
と呼ぶのなら、
サッカープレーヤーで注目されがちな
大腿や下腿の筋肉の肥大だけでは計れない
ものであることは明らかです。
ただ単に、
ウエイトトレーニングを行えば補えるものではありません。
そして、
「フィジカルで勝てないから・・・」
『身体接触をなるべくしないサッカーをしよう』
『身体的なハンディは運動量でカバーしよう』
それでは根本解決にはつながりません。
なぜなら、
サッカーは、フィジカルが反映されるスポーツ
だからです。
ですから、
フィジカルを上げないことには、
世界との差を縮めることはできません。
ずばり、ハリルホジッチ監督が言いたいことはその部分で、
それを正しく理解できない一部のマスコミやファンが、
誤った解釈をしています。
直接監督とお話ししたことはありませんが、
ハリルホジッチ監督は、筋肥大や体脂肪量減少のみを
選手たちに命じているわけではないことは明白です。
(➠それではボディビルダーをつくっているのと同じです)
身体を上手く効率よく動かすことを可能にし、
そして
相手とコンタクトした際に最大限の力が発揮できる
そのような肉体を準備しておくことが代表選手の必須条件である
と言っているのです。
しかし、
サッカーファンや指導者の中でも
未だ固執している方もいらっしゃることでしょう。
「フィジカルコンタクトを受けないサッカーをすればいい・・・」
それは、はっきり言って
『無理な注文』
です。
サッカーは、ラグビーと同じく
フットボール競技です。
「身体接触はない」
「あまり走らなくてもよい」
「スピードは必要はない」
・・・
そんなフットボールの試合はありえません。
フットボールをするのであれば・・・
「フィジカルが・・・」
といったようなネガティブな考え方を捨て、
正しい身体強化に努める必要があります。
それは成人に達した代表選手になってからでは遅すぎるのです。
サッカーとは?
フットボールとは?
どのようなスポーツなのか、ということを
子ども時分から正しく理解しながら
競技と向き合い、
年齢に応じた適切な設定でトレーニングを重ねていけば
いつの日か
「フィジカルが・・・」
「フィジカルで・・・」
という言葉も聞こえなくなり
そして日本も
世界の強豪国の仲間入りを果たしていることでしょう。
フィジカル・・・
その真の課題に目を向けることが大切です。