そもそもサッカープレーヤーの前に・・・
先日プロショップで、
ある方(*現在は指導者になられているそうです)のことが話題になりました。
この方は、育成年代で技術に秀で南米にも留学、
そして、強豪クラブと契約。
ただ、
その素晴らしい経歴の持ち主の方であれば・・・
ケガや病気がない限り、
日本代表・・・
それには届かなかったとしても・・・
Jリーガーにはなっていても不思議ではありません。
しかし、どれも現実のものとなってはいません。
実は、私の中学時代の友だちも同様。
小学校時代に全国レベルのとても優れたプレーヤーでした。
その小学生時期の活躍が、あるクラブチームの監督の目に留まり、
中学は親元を離れ遠い県外へ。
監督の自宅に居候というかたちで生活。
たまたま私が通っていた(中学)校区に転校してきます。
末は日本代表になると皆が期待し、
卒業式の時には、次々に"未来の代表"にサインをねだっていました。
ただ、その友人もサッカーの強豪、静岡の名門校に進学するものの、
チームとしては全国舞台にほとんど登場しないまま、大学に進学しその後、卒業。
東南アジアのクラブなどでプレーした後、現在指導者になっているようです。
それらのことを目の当たりにし、強く感じたことがあります。
それは、次の4つ。
❶スピードやパワーに頼るだけでなく、サッカーが上手くなければいけないこと
そしてその上手さとは、
❷偏ったもの(クセのあるもの)ではなく、真の上手さであること
さらに
❸自身にきっかけをもたらすチャンス(縁)に恵まれること
❹ただ単に、サッカーが上手いだけでは一流にはなれないこと
❶・❷についてはこれまでも述べてきました。
❶と❷・・・この部分は、非常に重要なことでありますが、今回は控えます。
そして、
次の❸も大きなポイントになりますので、これは今後書いていきたいと思います。
このたびは、❹に焦点を当てます。
育成年代を担うどの団体も、大小の違いはあれども
「目指せプロ!」
のようなことを掲げて活動しています。
上手い子がいれば、親を含め周囲は、その将来を期待します。
夢を大きく持って活動することは何も間違いではありませんし、
何も恥ずかしいことではありません。
むしろ、夢を持つことこそ大切なことなのです。
ですが・・・
実際にプロになれる人は、一体どれほどいるのでしょうか?
あなたの周り、ご近所に、プロサッカー選手はいますか?
ここ愛知県出身の現役プロ選手・・・
例えば、国内上位のJ1リーガーは何人いますか?
『プロアスリートを探すことのほうが難しい』
のが現状です。
例を挙げますと、
今年度のわが国の難関大学、
東京大学の入学者数は、3,120人
だったそうです。
一方で、
今シーズン、晴れてJリーガーになれた人の数は・・・
122人。
その内、1部リーグであるJ1は、50人。
(*内訳:高校生14人、大学生13人、昇格23人)
世間一般に「現役で東京大学に合格した」と言えば
「すごいね」
「秀才だね」
などと称賛を受けますが・・・
数字的には、
東京大学に入学することよりも、Jリーガーになることのほうが随分と難しい
ことが分かります。
さらに、シーズン終了後の現在、
チーム構想、戦力外などでチームを離れるJ1リーガーは、119人。
もちろんその人数は、他のチームで戦力になる場合もありますので、
単純にプロから脱落するわけではありません。
ただ、決まっている次の行き先を確認してみますと・・・
J1から下部リーグに移籍する(*レンタル含む)場合が多いことに気づきます。
繰り返しますが、
「プロを目指すのなんてバカなことだ、無意味なことだ」
などは、決してありません。
志を高く持って精進することで、
間違いなく得られることの大きさが変わってきます。
実は、今回のタイトルのポイントこそがココにあります。
子「プロになんてなれっこないし」
親「そんなこと、うちの子には"絶対"むり」
といった悲しい考えで、
"ただただサッカーをやっている(やらされている)"子・・・
多いように感じます。
▲学校の部活は(ほぼ)必修だから?
▲みんながやっているから?
▲スポーツをやっていたら何となくいいことがありそうだから?
▲将来、面接時に有利になるから?
・・・
どれも動機としては、残念な(もったいない)限りです。
特によくありがちな
▼スポーツをやっていたら何かいいことがある
▼進学や就職の際に有利になる
残念ながら適当にやっていても、実は何も良いことは起こりません。
●多少体力がついた
●幼少期にスポーツをやっていた事実が残った
●何かの大会で賞を獲った・選抜チームに選ばれた
・・・
まあ、(得ることは)それぐらいでしょうか。
"せっかくやる"のであれば、
意味のある取り組み方をしなければなりません。
将来のある子どもたちだから。
では、意味のある取り組みとは?
正しく、真剣にスポーツに向き合うことです。
「正しく、真剣に」ということ・・・
これは、一般的なスパルタ教育とは異なります。
論点を、今一度整理します。
まず、ほとんどの子どもがプロアスリートになれるわけではありません。
[上記参照 ☛ 東京大学に入学することよりも狭き門である事実]
さらに、
プロになったとしても、
永久にプロアスリートの地位を保証されたわけではありません。
だから、
"サッカーだけ"
もっと言えば
『プロ選手になることだけ』
を目指していては、いけないのです。
「サッカーをやって何を得るか」
を意識して積み上げる(実行する)ことを第一に置くべきです。
サッカー選手になることができなければ・・・どうなるのでしょうか?
当たり前ですが、
社会人になるということ ※プロアスリートも社会人であることには違いありませんが
それは、
社会で働くこと
つまり、
集団社会(組織)に入るということ
そしてさらに、
そこで何ができるかが大切なことなのです。
そこには、例えばボールリフティングの技術は問われません。
つまり、人間力が必要なのです。
人間力とは?
今、この場ですぐに思いつくことは・・・
◎忍耐力・・・諦めない
◎集中力・・・やり続ける
◎協調性・・・助け合う
◎自主性・・・自分から動く
◎規律性・・・ルールや約束を守る
◎社会性・・・空気を読む
といったことでしょうか。
それらをよくよく考えますと、
サッカーやスポーツの指導の現場で、
用いられるもの(言葉)ばかりだということに気づかされます。
が、一方で
これらは、スポーツをしていれば自然に身につくものではありません!
ここが肝です。
スポーツの中には、それらを体験する、体感するような
きっかけがあるだけにしか過ぎないのです。
だから、そのきっかけの一つ一つの場面の中で、
大人が子どもに正しく関わることが求められるのです。
人間は、当たり前ですが、
サッカープレーヤーの前に人間
なのです。
人間としての資質を備えていなければ・・・
プロアスリートになれないばかりか
人生は輝きません。
私どものクラブにも時折問い合わせが入ります。
電話の向こう側では母親らしき女性の声。
Aさん「ホームページを見て知りました。平日に活動しているんですよね?」
私「はい。ところで、どのような理由で入会を希望されていらっしゃいますか?」
Aさん「週末に別団体で活動中ですが、
試合でレギュラーになって欲しいから練習量を増やそうと思って」
私「・・・」
当然この場合、冷静に対応しながらも、毅然と対応させていただきました。
こちらが甘い言葉を話し、先方が無理やりご入会なされたとしても、
数日も持たない間にお辞めになれることが
充分に予想されるからです。
また、そのお問い合わせのお子さまに懸命に手を加えたとしても、
良いサッカープレーヤーになれるとは思えなかったからです。
(▷残念ながら「救ってあげられないこともある」という悔しい例の一つです)
もし仮に
「なぜ先のことが分かるの?」
というご質問があった場合に対しては・・・
今回のブログの内容をそのままお伝えするつもりです。
『良いサッカープレーヤーなりたければ
自身の人間力を高めるべきです』
この文言は、全ての子どもや大人に伝えたい強い想いであり、
これからも変わらない、私のクラブの基本理念です。