"サッカーだけ"でいいのですか??
つい先日、インターネット上のニュースで目にした記事です。
休みは全くなかった。月~金と練習があり、土日は試合。
そこに早朝6時からの朝練も加わった。やんちゃな遊び友達も多かったAが、
サッカーをやめようと思ったことは一度や二度ではない。
公式戦ですら「おなかが痛い」と休もうとしたものの、監督は許さなかった。
いつしか、月曜日は朝練に行き、
学校を休み、通常の練習に行くことが当たり前になった。
・・・
Aとは、現在某Jクラブのトップチームに所属のある選手です。
(ちなみに代表経験もあります・・・)
話は変わります。
当ブログも様々な方にご覧いただき、
そして、評価をいただき感謝の気持ちでいっぱいです。
一方、自身もいろいろなブログを拝見しています。
その中でも、
自ずと、子ども・育成年代のサッカーについての記事に目が向きます。
ただ・・・
・・・・・・
偉そうな意見ですが・・・
残念な記事が多いのも事実です。
試合に勝った、負けた、それを育成の成功のように・・・。
例えば、子どもの大会で優勝したことは、それほど価値があるのでしょうか?
私は真剣に考えたいのです。
育成年代で輝かしい結果を残した人物が、
その後、伸び悩んでいる事実を・・・。
自身、長年の指導の現場を通して気づきました。
非常に高い能力を有しているのにもかかわらず、
「何かが足りなくて競技者として大成しなかった子がいる」
ということを。
小学生時分、
"天才"
と周囲から称された子が、
その後、上っていけない事実が、現にあるのです。
J下部のテストに合格しても
全国選手権に出場しても
それが、将来の保障には何もならないことを
子どもも大人もその現実を知らなければなりません。
つまり・・・
「サッカーだけではだめなんだ」
ということ。
まず、子どもの本分は、何でしょうか⁇
"サッカーをすること" でしょうか?
"友だちと遊ぶこと" でしょうか?
"勉強すること" でしょうか?
・・・
どれも大切です。
ただ強いて言えば
・・・
「勉強すること」
ではないかと思います。
一口に勉強と言っても・・・
いろいろな意味がありますが
ここでは、
『学校に行く』
ということです。
小学生・中学生の時期は、
日本では"義務教育"期間になります。
それはどなたも承知のことです。
ただ、
「義務教育とは?」
「義務教育はなぜ必要か?」
ということを理解している方は、
実際は、少ないのではないでしょうか。
(私も同様です)
教育についての原則を定めたわが国の法律、
『教育基本法』では、
以下のように明記されています。
教育基本法 第4条 (義務教育)
「国民は、その保護する子女に、九年の普通教育を受けさせる義務を負う」
とあります。
だから、大人は、子どもを学校に通わせなくてはならないのです。
(子どもが学校に行かねばならないという意味ではありません)
さらに、学校教育制度の根幹を定める法律、
『学校教育法』では、その意味や定義を明確にしています。
一部抜粋します。
第6条
学校においては、授業料を徴収することができる。
ただし、国立又は公立の小学校及び中学校、これらに準ずる盲学校、聾学校
及び養護学校又は中等教育学校の前期課程における義務教育については、
これを徴収することができない。
第19条
小学校の修業年限は、六年とする。
第22条
保護者(子女に対して親権を行う者、親権を行う者のないときは、未成年後見人をいう。以下同じ。)は、子女の満六歳に達した日の翌日以後における最初の学年の初めから、満十二歳に達した日の属する学年の終わりまで、これを小学校又は盲学校、聾学校若しくは養護学校の小学部に就学させる義務を負う。ただし、子女が、満十二歳に達した日の属する学年の終わりまでに小学校又は盲学校、聾学校若しくは養護学校の小学部の課程を修了しないときは、満十五歳に達した日の属する学年の終わり(それまでの間において当該課程を修了したときは、その修了した日の属する学年の終わり)までとする。
第29条
市町村は、その区域内にある学齢児童を就学させるに必要な小学校を設置しなければならない。
第37条
中学校の修業年限は、三年とする。
そして、第21条には、
「義務教育として行われる普通教育」
というものが明確にされています。
普通教育とは何か、と正面から問われると・・・
恥ずかしながら“普通教育”というものを、
私は深く考えたことはありませんでした。
では、具体的に普通教育とはどのようなものでしょうか?
- 学校内外における社会的活動を促進し、自主、自律及び協同の精神、規範意識、公正な判断力並びに公共の精神に基づき主体的に社会の形成に参画し、その発展に寄与する態度を養うこと。
- 学校内外における自然体験活動を促進し、生命及び自然を尊重する精神並びに環境の保全に寄与する態度を養うこと。
- 我が国と郷土の現状と歴史について、正しい理解に導き、伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛する態度を養うとともに、進んで外国の文化の理解を通じて、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと。
- 家族と家庭の役割、生活に必要な衣、食、住、情報、産業その他の事項について基礎的な理解と技能を養うこと。
- 読書に親しませ、生活に必要な国語を正しく理解し、使用する基礎的な能力を養うこと。
- 生活に必要な数量的な関係を正しく理解し、処理する基礎的な能力を養うこと。
- 生活にかかわる自然現象について、観察及び実験を通じて、科学的に理解し、処理する基礎的な能力を養うこと。
- 健康、安全で幸福な生活のために必要な習慣を養うとともに、運動を通じて体力を養い、心身の調和的発達を図ること。
- 生活を明るく豊かにする音楽、美術、文芸その他の芸術について基礎的な理解と技能を養うこと。
- 職業についての基礎的な知識と技能、勤労を重んずる態度及び個性に応じて将来の進路を選択する能力を養うこと。
・・・と、多岐にわたります。
衆議院の憲法調査会でも取り上げられました岩手大学教育学部の武田晃二教授の論文
を参照にしますと、
“普通教育"とは『人間を人間として育成する』
ということになります。
「サッカーをすること」
それによって成果を上げ
周囲に良い影響(例えば、勇気や希望)を与え
さらに、それによって収入を得る
・・・
これは、
プロ選手の姿(日常)です。
だから、
子どもたちにとって
サッカーをすることは、
(生活の)一番目ではないのです。
子どもの頃は、
人間としての糧を確実に積み上げていくことが
本分になります。
そして、(サッカーの)基礎・基本技術の習得になります。
一方、
試合に勝つことや選抜(トレセン)に選ばれることも自信にはなるでしょう。
しかしながら・・・
それが目的(目当て)になっては、
子どもの将来は輝きません。
なぜ?
将来、サッカー選手になれる可能性は、限りなく少ないからです。
(「子どもに夢を持つな」と言っているわけではありません!)
だから、
子どものころから
"サッカーに人生の全てを捧げる"
という考えは、とても危険といえるのです。
分りやすい図式で説明しますと
『自分 - サッカー = "0"』
で、本当に良いのですか?
ということです。
就職試験を想像してください。
▼漢字を知らない
▼社会常識を知らない
▼時事問題を知らない
何はともあれ、
「サッカーの観念しか持ち得ない」
・・・
あなたが人事担当者なら
そのような人物を選べますか?
反対に、
より多くの観念を持った人物こそ、
(👆㊟何でも屋になれと言っているわけではありません!)
「様々な事象に対応ができそうだ」
と、安心感を与えます。
社会は、対応力のある人間を求めています。
そして・・・
多くの人々が気づいていないのが
サッカーだけで、サッカーの将来は拓けないことです!
なぜなら・・・
サッカーで大成するためにも
実は、多くの観念が求められるからです。
サッカーは、問題解決のスポーツです。
サッカーは、多くのことを教えてくれますが、
その観念だけでは、問題解決には限界があります。
これはサッカーだけに限ったことではなく、
野球でも、バスケットボールでも、
どの種目も同様かと思います。
人間は、心にも身体にもいろいろな刺激が必要です。
そして、その刺激が観念を形成していきます。
それができるのが、学校です。
学校生活、
先生、同級生、先輩・後輩・・・。
先の
「学校を休んで、クラブの練習に行くのが当たり前に」
という記事・・・
育成年代のそのクラブの方針に大きな疑問を感じました。
(記事を書いた記者は疑問に感じなかったのでしょうか・・・)
でも・・・
「Aさんは晴れてプロになり、代表にも選出されたじゃないですか」
というご意見もあることでしょう。
ただこのAさんは、代表には定着したわけではありませんし、
もし、
仮に代表の中心選手となったとしても・・・
ケガをしてサッカーを諦めざるをえなくなったら?
そして、引退した後の生活は?
いつかはおとずれる競技者としての限界・・・。
日本のプロサッカー選手の選手寿命の平均をご存知でしょうか?
『25〜26歳』
・・・驚きの数字です。
J3を除いた数字(選手寿命の平均値)ですが、
これを認識しなくてはなりません。
契約形態や引退をどのラインで区切るかなど測り方により多少の前後はしますが、
これが現状なのです。
多くの子どもたちが、大凡30歳以上の引退年齢を予想するかと思いますが、
その予想より遥かに『短い』のが現状です。
例えば、高校卒業して早々とJリーガーとなり、
鳴り物入りでJプロデビューを果たしても、
不運な怪我やプロの洗礼を浴びて、芽が出ず3年で引退・・・
となると、引退年齢は21歳。
21歳といえば、ちょうど同世代は大学4年生を目の前に、
就職(活動)を意識し始める時期です。
サッカーに対して真摯に取り組み、
プロになるという夢を叶えた経験は絶対に力になりますが、
本人が、「サッカーだけ」しか残っていないという状態では・・・
長い人生を考えた場合、
かなり厳しい現実が待ち受けています。
だから、子どもの頃から正しい目線で
将来に向けた準備を整えておく必要があるのです。
現在、サッカーについても教育についても、
その考え方やあり方は、残念ながらさまざまです。
ただ、一つ確実に言えることがあります。
子どもを
“国民として”
“職業・企業人として”
まず
“人間として”
教育することを
大人に要請しています。