2018ワールドカップ総括【日本の課題❷】
ワールドカップの総括・・・
といっても
W杯ロシア大会は、随分過去のことのように感じます。
(しかし実際は、まだ二カ月ほど前のことなのですが・・・)
4年に一度しか訪れないワールドカップ。
だから、この経験を絶対に無駄にはしたくありません。
「この機に何を感じて、何を改善していくのか」
“ここ”が大切です。
今回軸となる部分は、
あの監督解任騒動についてです。
ワールドカップ直前での代表監督の解任。
やはり、何度考えてもありえないことです。
土壇場での解任劇。
このたびは、スペインもそうでした・・・。
このようなドタバタは、決してあってはいけないことですが、
スペインの場合は、云わば仕方がないといえます。
スペイン“元”監督のロペテギ氏は、
5月にスペイン代表との契約を2020年まで延長したばかりでしたが、
なんと、翌月の6月12日に
来季からレアル・マドリードの指揮を執ることが
急遽、発表されました。
これに憤慨したのがスペインサッカー連盟で、
ルビアレス会長は
「彼がレアル・マドリーに行くことを我々は5分前に知ったんだ。
こんなケースは受け入れられない」
とコメント。
これが本当のことであるならば・・・
あまりにも不誠実。(俗語ですが、二股になります)
この件に関しては、
元スペイン代表選手たちからも連盟の解任の決断に対して
否定的な意見は出ていません。
例えば、
ロペテギ氏がレアルと契約を進めた判断について
「時期が不適切で軽率」
と主張。
さらに
「連盟(ナショナルチーム)のほうが常にクラブチームより優先されるべきだ」
とし、RFEF(スペインサッカー連盟)の対応を評価。
「代表チームの尊厳を守り、しっかりと取り組むための判断は、
決して悪いものではない」
とコメント。
さらに、
往年の代表ストライカー、
毅然と次のように述べました。
「もしW杯で優勝できなくても、スペイン代表は品格の点で王者だ」
・・・
そう、
スペインの場合は、
監督解任の理由が、至って明確なのです。
ですから、
元代表選手をはじめ、
国民からも大きな疑問の声は上がりませんでした。
しかし一方、
わが国の場合は・・・
「選手とのコミュニケーションや信頼関係が、多少薄れてきたこと
そして、今までの様々なことを総合的に生かして、この結論に達しました」
との協会会長の説明。
「選手との信頼関係、コミュニケーションの問題」
・・・
これで何人の人が納得し得たのでしょうか?
少なくとも、私自身は理解することができませんでした。
▶海外組を抜き戦い惨敗したE-1選手権の際
・・・
「解任するタイミングは、以前にも充分にあったでしょう」
とする元代表選手や評論家も、多数いらっしゃいました。
しかし、
それでも私の中では解任が適当だとは思えませんでした。
その理由は、過去にも書きました。
さて、前置きが大変長くなってしまいました。
今回の問題提議は、
『日本サッカーの将来像を意識した協会の進み方に対しての問題』
です。
既に過去のものとなりましたW杯ロシア大会。
日本は2大会ぶりのベスト16入り。
一見、素晴らしい結果を残したように感じます。
ガチンコでぶつかり合う世界大会で、
ベスト16に進めたことは、評価に値します。
しかしです。
これは、多くの方もお気づきのように
勝利したのは1回のみ。
4試合で、1勝1分2敗。
仮にですが、
初戦のコロンビア戦のあのハンドの反則がなく、
11人対11人で戦っていたら・・・。
さらに、
コロンビアのエース、
ハメス・ロドリゲス選手のコンディションが良い状態で、
スタメンでプレーしていたら・・・。
そして、さらに
退場になった後の最初の交代の場面で
前への推進力があり、個の力で局面を打開できる能力を有する、
フアン・クアドラード選手がベンチに下がらなければ・・・。
あの勝利も手に入ったかどうかは・・・
定かではありません。
もし仮に
初戦のコロンビア戦を落としていたら・・・
全敗でグループリーグを敗退していた可能性が高かったような気がします。
(本大会ではチームの勢いやリズムも大きく左右しますから)
「ノックアウトステージで強豪ベルギーを追い詰めた」
ともいわれていますが・・・
結局は、あのカウンターの一撃でやられたわけです。
Belgium v Japan - 2018 FIFA World Cup Russia™ - Match 54 - YouTube
“切り替えの速さ”
“動きながらの精度の高いプレー”
そして、
“相手の弱点をピンポイントで突いてくる強かさ”
・・・
強豪国との開きを感じました。
ところで、
強豪国と対等に戦い勝利するために
今から3年前に指針を明確に示しています。
それが
JFA中期計画2015‐2022
https://www.jfa.jp/about_jfa/plan/JFA_plan2015_2022.pdf
です。
この資料のP37には、
次のように明記されています。
◎世界基準へ
【課題の克服】
◆フィジカル面の更なる向上 (Physical Ability)
➡ 強さや太さ、逞しさや激しさを求めていく。
➡ Duelでの勝負強さ。簡単に倒れない。
◆戦術的柔軟性 (Tactical Flexibility)
➡ 相手の特徴や戦術によって闘い方を柔軟に変化させる。
➡ 自分たちの望む展開にならずとも、したたかに闘い勝点を得る。
◆勝者のメンタリティの獲得 (Winning Mentality)
➡ 闘う姿勢を90分続ける、あきらめない、下を向かない。
➡ 勝負、ディティールに拘り、貪欲に勝つことだけを考える。
➡ 相手にコンプレックスをもたない。
(※2015年4月技術委員会策定)
これらは正に前回大会の
『W杯ブラジル大会で露わになった日本の課題から作成された方針』
であり、
これを解決すべく、
日本サッカー協会は、その適任となる指揮官を
遠い異国の地から招聘したのではないのでしょうか。
そして、
その任を担ったハリルホジッチ氏は、
この課題に真っ直ぐに向き合いました。
その結果を・・・
残念ながら私たちは、この目で見ることはできませんでした。
繰り返しますがその理由は、
「選手との信頼関係、コミュニケーションの問題」
・・・。
何とも曖昧で不可解な解任理由。
しかも、本番直前の土壇場で。
さらに、協会会長は(解任説明の)記者会見で次のように述べました。
「私は1%でも2%でも、W杯で勝つ可能性を追い求めていきたいと考えています。
そのためにこの結論に達しました」
確かに・・・正論のように聞こえます。
勝つために必要な、ギリギリの決断。
でも別の角度からこの言葉を聞くと、
この解任の判断は、次のような意味であるということ。
日本サッカーの将来よりも、目先の勝利を優先した選択
人間の成長に向けた正しい過程とは
次のような道筋で成されるものです。
①まずは実行(チャレンジ)して、
②チャレンジの結果を評価、その中から抽出された課題を抜き出し、
③課題に向けた取り組みを確実に行い、
そして、
④次のチャレンジをしなければいけない
のです。
これは、サッカーに限らず学業の面でも、仕事の場面でも
極々当たり前のことであるはずです。
でも、
今回の会長が決断したW杯前の監督解任は・・・
③から④の橋を壊し、
課題に対して、小手先の修繕作業を行おうとしたのも同然
なのです。
本来、4年間をかけて臨むはずのプロジェクトが、
ここで完全に泡となり、
評価も、反省もできなくなり、
「ただW杯が来て、該当する試合を戦った」
ことになります。
そして、
W杯の結果(ベスト16)だけが残った
のです。
日本は、まだまだサッカー発展途上国です。
つまり、
子どもを大人に育て上げている過程と同じ
だと考えなくてはなりません。
早急に答え(結果)を求めるのではなく
丁寧に
時間をかけて
育てていかなくてはならない時期なのです。
しかし、
育成年代のサッカーにも見受けられます。
目の前の勝利欲しさに
子どもたちの将来を見ることができなくなっている団体を・・・。
「勝利と育成は繋がらないのか」
という課題は、今も昔も変わらない永遠のテーマです。
勝つことと育てることが、全く繋がらないわけではありませんが・・・
「どちらが優先されるの?」
と問われると
「それは育てることです」
と指導者は堂々と胸を張って言えなくてはいけません!!
勝ちを優先すると、
自ずと方向がぼやけてくるからです。
(人間は欲深い生き物ですから・・・)
気づけば、初期の想いと反して、
活動そのものが、あらぬ方向に行ってしまう場合が多々あります。
極論にはなりますが、
「このたびのロシア大会は、全敗でもよい」
と個人的には思っていました。
日本が嫌いなわけでもありませんし、
反対に、
日本人として日本代表を応援しています。
ただ強豪国と比較しますと、
まだまだ何かが足りてない・・・
それが、
今の日本代表、日本サッカーの現状(実力)だからです。
繰り返しますが、
ハリルホジッチ元監督の方向性は、決して間違ってはいませんでした。
むしろ
日本人があまりにもサッカーも、アスリートととしての知識や観念にも未熟で、
ハリルホジッチ氏の目指していたことが、
ほとんど理解ができていないことが問題だったのです。
それらは、
サッカー担当記者が書くインターネットの記事を読んでも明らかです。
⇓
ハリル監督また鬼指令「体重の1・5倍以上をスクワットで挙げよ」― スポニチ Sponichi Annex サッカー
合格は12%!ハリル監督 体脂肪率違反者に“失格テープ”― スポニチ Sponichi Annex サッカー
ハリルに選手ゲンナリ 体脂肪率12%超はNZ戦“懲罰欠場”|日刊ゲンダイDIGITAL
それに同調する元サッカー選手をはじめ、有識者・・・
頭が痛いです。
これまでも取り上げてきました、
“脚の筋力”
“体脂肪率”
の数値は、
国を代表して、強豪国と戦うサッカープレーヤーとしては
クリアしておかなくてはいけない最低限の項目です。
しかし中には、次のような見解を示す方もいらっしゃいます。
「脚の筋力や体脂肪率では、
プレーヤーの「創造性」や「精神力」など
他にも数多くある、
サッカープレーヤーとして必要な資質を測ることはできない。
たとえ、体脂肪率が高いとしても、
高い創造性を持って膠着した局面を打破できれば
高い精神力を持って何が何でも点を獲れることができれば
絶対に代表選手として起用すべきです」
と。
・・・・・・・・・・・
確かに、一理はあります。
しかし、
そのプレーヤーが、
本当に世界の舞台で戦い結果が残せているのなら、
まだ解らなくはありません!
国内で少し活躍していたり、国外クラブに所属しているだけで、
そのプレーヤーが、
代表選手として国際舞台で成果を挙げることができるでしょうか?
Creativity(創造性)
Mentality(精神力)
は、よく耳にする言葉ですが・・・
実際に、
それを体現している日本人プレーヤーを何人挙げられますか?
そして、
このような意見を述べますと、
「自虐的だ」
と否定的な意見を述べる方もいらっしゃいます。
さらに、
そのような(言葉を発する)人の多いこと・・・。
だから、
ハリルホジッチ氏は、解任されたのだと考えられます。
「日本人はもう強くなったからいいじゃない」
そんな安易な気持ちで、良いのでしょうか?
仮に、そのような感覚や気持ちで
実際に、ロシア大会を迎えようとしていたのであれば・・・
「ハリルホジッチ氏はいらない」
ということになっても不思議ではありません。
「上から目線だ」
「理不尽だ」
「結果が出せない」
・・・
それら全ての言葉を解任前、本当によく耳にしました。
そのたびに私は、
“日本人の弱さ”
が気になりました。
監督の要求に応えられない、プレーヤー側の拙さは
なぜ問題にならなかったのでしょうか?
それほど日本サッカーは強くなったのでしょうか?
これは、FIFAランキングだけのことではありません。
クラブチームは?(・・・ACLは?)
代表チームは?(・・・アジアカップは?)
実は、アジアでも誇れるような力を発揮しているわけではありません。
では、個人では?
現在世界最高レベルのリーグ、
で、“はっきりとした結果”を残しているプレーヤーは?
何人いるでしょうか??
これだけ見ても明らかなのにも関わらず、
『発展途上であることの認識が欠けている』
『世界に学ぼうとする意識が欠けている』
・・・
どこか“驕り”を感じます。
辛辣な表現ですが
これではまるで、
片田舎で強いと評判の学校のサッカー部・・・
強いと勘違いしている生徒やその周りの住人たちと同じ。
一方・・・
「ロシア大会でベスト16入りしたじゃない?」
これも間違いです。
グループステージで敗退した国・・・
例えば
大陸予選で敗退した国・・・
イタリア、オランダ、チリ、ウェールズ・・・
そして、アジアのライバルたち
イラン、韓国、オーストラリア・・・
これらの国々と真っ向勝負して、
日本は、確実に勝てる力がありますか?
にも関わらず、
ハリルホジッチ氏を煙たがって
課題そのものから目を背けて、どうするというのでしょうか?
仮に、
大会前に選手たちがそのような雰囲気になっていたとしても
「なぜ、協会が(*良い意味で)このような監督のもとで
今日、日本代表がサッカーをする選択をしたのか」
そこをはっきりと姿勢や態度で示さなかったのでしょうか?
陰で噂されている
スポンサーの問題なのでしょうか?
協会内の権力闘争の結果なのでしょうか?
それとも、
サッカー自体の人気低落を恐れたからなのでしょうか?
繰り返しますが、
ハリルホジッチ氏を招聘した時には、
少なくとも協会側には、(当初は)きちんとした理由がありました。
「前回のブラジル大会から出た反省をクリアしたい」
だから、それに向けてのチャレンジでした。
そのチャレンジを行った結果が、
「結果が出なかった」のであれば、
その課題が、今はあまりにも大き過ぎたということになります。
余談ではありますが、
実はその課題とは、
代表で解決する問題ではなく、
育成年代からの改革や改善が必要になる問題
だと私は考えています。
とにかく、
ハリルホジッチ体制をひとまずW杯が終わるまで維持するべきでした。
その結果、
日本サッカーに球際の逞しさやゴールへ向かうスピードが感じられたのであれば
日本は少し世界に近づいたと評価できます。
でも・・・
その評価の場を
目先の勝利にしがみつくばかりに、
万人が理解できる理由もなく壊してしまったことは、
日本サッカーにとっては、非常に大きな損失であった
と私は感じています。
・・・
このたびの内容をここまでお読みになられても
「だって日本代表がんばっていたじゃない」
という方もいらっしゃることでしょう。
確かに、良い点も観られました。
流れの中から得点を決めることができました。
コロンビア、ベルギーからも先制点を挙げて
試合を優位に進めることができました。
セネガルには、2度のリードにも追いつき引き分けることができました。
FIFAランキング(6月時点で)8位のポーランドを1失点で抑えることができました。
良かったことばかりのように感じます。
・・・
ではこの結果は、何が原因だったのでしょうか?
もちろん、西野前監督のチームマネージメントも功を奏したことでしょう。
でも、一番は何でしょうか?
私は、
「監督解任で火がついたこと」
「雰囲気が変わったことで気分転換が成されたこと」
(日本人スタッフで通訳の必要もなくなりました)
この2つは大きかったと思います。
でもこれは、
あくまで、
病気の人間が即効性のある薬を飲んだに過ぎません。
つまり、
熱のある人間が解熱剤で熱が下がった
(元気になったと誤解している)
だけです。
逆に、
ハリルホジッチ氏が監督だったらどうだったのでしょうか?
惨敗だったかも知れません。
でも繰り返しますが、
それでも日本のためには、良かったのではないでしょうか。
私は、このW杯後の様子に大きな不安を感じています。
「やっぱり、外国人指揮官ではダメだったんだ」
「もうこれからは日本人で何でもやる(できる)時代だ」
という誤解から始まったシフトチェンジ・・・。
もし
この結論が、森保監督誕生なのであれば・・・
とても不安です。
さらに、森保監督は五輪代表とも兼任です。
Jリーグでは結果を残されていますが・・・
力は未知数です。
何事もチャレンジは必要です。
一概に、
このたびの久々の日本人監督の登場を否定しているわけではありません。
でも、
本当にブラジル大会からロシア大会までの
検証がきちんとなされた末の新監督誕生だったのでしょうか❔
ロシア大会前の監督解任劇は、
明らかに“異常事態”だったわけです。
その検証は、
正確にできているのでしょうか。
そして、
その責任は・・・。
・・・・・・
W杯ベスト16
で、全てが流されては、真に明るい未来はありません。
このたび資料として活用しましたJFA中期計画2015‐2022では、
・・・
2018年 FIFAランキング トップ20位
2022年 FIFAランキング トップ10位
を掲げています。
現実はどうでしょうか?
W杯が終わった現在のFIFAランキングは、
2018年8月現在、日本は
55位
です。
明らかに目標に到達してはいません。
これでは・・・
偏差値が足りないにも関わらず
難関校を受験しようとしている生徒と同じなのです。