アレグラン渡部のサッカーの素

愛知県東海市のスポーツクラブ "アレグラン東海” の代表の渡部貴朗が、自身のサッカー観を中心に、スポーツ、教育など気になることを素直に書いていきます!

競技規則の改訂

先日、Jリーグの中継を観ていました。

 

そこで、あるプレーヤーが、負傷(※額辺りからの出血)により退出して、

2分間ほど治療を受けてから、タッチラインからフィールドに戻る場面がありました。

 

主審は、副審からの合図で、

負傷したプレーヤーがフィールドに入ることを許可しました。

 (その際、主審は処置を済ませた負傷者に近づくとことはありませんでした)

そのシーンで、放送内では、次のようなコメントがありました。

 

「“新しいルール”に変わりましたからね・・・」

 

・・・

私は慌てて、競技規則を読み直しました。

そして、新たに改訂された競技規則も確認しました。

 

2015/2016版 サッカー競技規則からの抜粋です。

 第5条 主審

[職権と任務]

●負傷によって出血した競技者を確実にフィールドから離れさせる。

その競技者は、止血を確認した主審の合図を受けてからのみ復帰できる。

 

【例】

出血したので、負傷したプレーヤーは一時フィールドを離れました。

治療を終えたプレーヤーは、ハーフウェーライン付近のタッチラインから

復帰を求めました。

そのプレーヤーに対して、主審は走り寄って止血を確認。

そして、フィールドに入る許可を与え、そのプレーヤーはフィールドに戻りました。 

 

これは、非常に基本に忠実といえます。

しかし・・・

いつも主審がすべて止血を確認していたら、試合進行にも時間がかかることになり、

アディショナルタイムの増加にもつながりかねません・・・。

 

そこで、“副審”について確認してみました。

《競技規則の解釈と審判員のためのガイドライン

第6条 副審

[任務と責任]

副審は、主審が競技規則に従って試合をコントロールすることを援助する。

また、主審の要請や指示によりその他試合運営にかかわるすべての事項について

援助する。通常、これは次のようなことである。

●フィールド、使用されるボールおよび競技者の用具を検査する。
用具や出血の問題が解決されたかどうか判断する。
●交代の手続きを監視する。
●時間、得点および不正行為の記録を予備的に取る。

 

これで明らかになったように、“改訂前の競技規則”にも 

「副審は、主審が競技規則に従って試合をコントロールすることを援助する」

という文言と共に、

『用具や出血の問題が解決されたかどうか判断する』

という内容が具体的に示されています。

 

ですから、従来の競技規則の下であったとしても、

この日に観た場面のように、

「止血の状態を副審が確認して、主審がプレーヤーを戻すことは可能」

であったわけです。

 

では、今回のテレビ放送内で関係者の方々は、

一体何のことと勘違いをされていたのでしょうか?

 

2016年5月19日付けのJFAからの通達に・・・

「2016/2017年競技規則の改正および国際サッカー評議会によるその他の重要な決定」

の中の補足に次のような文章がありました。*IFABとは?…国際サッカー評議会のことです。

日本協会の解説(IFABからの通達に示されていない重要な改正事項について)
別紙1の対照表は、今回の全改正点を網羅しています。しかしながら、IFABからの回状では、いくつかの重要な改正点について触れられていないため、以下に示します。

●靴などの用具の交換において、その用具を正す、または取り替えるためにフィールドから離れた競技者は、第4の審判員や副審がその用具を点検できた場合、負傷した後に復帰する競技者と同様、ボールがインプレー中であっても主審の承認を受けた後、フィールドに復帰できる。

・・・というものが、ありました。

 

つまり、新ルールとは、『用具の交換に関して』のことです。

ですから、負傷者のこととは直接関係なく、これを混同されていたと推測されます。

 

物事を正確に知っていることは、大切です。

 

昨年度のことです。

ある試合に、小学生を引率していました。

その中で、ある子どもが言いました。

Aくん「あれは、“キーパーチャージ”だ」

私「・・・なんでそんな言葉を知っているの?」

Aくん「だって、コーチ(※他団体さん)が言っていたから」

私「・・・・・・」

~事実を言うべきか、否か、しばらく考えた後~

私「実はね、“キーパーチャージ”という言葉は、現在はないんだよ」

Aくん「うそー」

 

本当のことを告げたところ、とても驚いていました。

Aくんは、ある少年団さんや学校の部活とも掛け持ちで、

そのどちらかで、指導者の方から聞いたのでしょう。

率直な意見ですが・・・

本当に(Aくんを)可哀想に感じました。

これでは「何を信じていいものなのか・・・」という、

正にそのような気持ちではなかったでしょうか。

 

キーパーチャージ”がなくなったのは、

『1997年の競技規則大改正』のときにさかのぼります。

つまり、今から約20年も前のことになります・・・。

この時の改正で、ゴールキーパーに対する接触は、

他のフィールドプレーヤーに対して許容されている程度の接触までは、

認められるようになりました。

そもそもキーパーチャージとは・・・皆さまご存知でしょうか?

1996年までは、

「“ゴールエリア内”では、ボールをプレーしようとするゴールキーパーに対して

チャージすることは認めない」としていました。

これがキーパーチャージというルールです。

例えば、ゴールキーパー

「高く上がったボールを取りに行こうとします」

「セービングしようとします」

その動きを阻止するチャージは、そもそも危険なのですが、

このようなプレーが“ゴールエリア内”で頻繁に起こることから、(1996年以前までは)

競技規則に盛り込まれていたのです。

 

一方で、“キーパーチャージ”という言葉はなくなりはしましたが、

ゴールキーパーも、フィールドプレーヤーに適用されるルールで守られています。

 

大人が学ばずに子どもの前に出ると、

時として子どもたちに「誤解」「懸念」を招きます。

報道関係の方々も同様で、にわか仕込みの知識の言葉が電波に乗りますと、

子どものケースと同様に、視聴者に「誤解」「懸念」を与えます。

 

完璧な人間など存在しません。

しかし、指導者が学ばなければ、子どもを伸ばすことはできません。

自身もさらに精進しなければなりません。