アレグラン渡部のサッカーの素

愛知県東海市のスポーツクラブ "アレグラン東海” の代表の渡部貴朗が、自身のサッカー観を中心に、スポーツ、教育など気になることを素直に書いていきます!

あの退場はコロンビアにとって“アンラッキー”だったのか?

先回のタイトルで、

 

改めて自身の日本代表の想い

 

を書きましたが

 

・・・

 

これだけではいけません!

 

 

つまり、

 

「がんばれ、ガンバレ」

 

だけでも

 

「勝ってよかった」

 

「感動した」

 

だけでもダメ。

 

 

なぜなら、

 

自身は

 

「指導者だから」。

 

 

 

将来のある子どもたちに、

 

正しいことを伝える立場にあります。

 

 

 

コロンビア戦後のテレビ等の報道には、

 

正直、がっかりさせられています。

 

 

 

どうしても、

 

サッカー人の目線になってしまうのは仕方ないですが・・・

 

あまりにも「酷いな」と感じる報道が溢れています。

(毎度の毎度の勝てばお祭り騒ぎ状態・・・)

 

 

これに関しては、

 

また書きたいと思います。

 

 

 

 

指導者の話に戻ります。

 

 

人間誰しも

 

間違えはあります。

 

 

 

指導者も同様。

 

 

 

しかし、

 

真実を追求し、

 

現状を見極め、

 

子どもに正しいことを

 

誰かが伝えていかなければなりません。

 

 

だから、

 

このたびのワールドカップも

 

自身の知識やサッカー観を高めるべく、

 

また、責任ある大人として、

 

何か子どもに話してあげられるネタを探すべく、

 

観戦したいと考えています。

 

 

 

そこで今回取り上げますのが、

 

日本が試合を優位に進める発端ともなった

 

前半3分の

 

コロンビア⑥カルロス・サンチェス選手の

 

あのプレーです。

 

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C・サンチェス選手は、

 

試合の立ち上がり早々の前半3分に、

 

香川真司選手⑩の放ったシュートを手でブロックしたとして、

 

PKを献上。

 

さらに、このプレーにより今大会初となる一発退場の判定が下され、

 

W杯初戦という大事な一戦、早々にピッチを後にしました。

 

 

 

 

この判定に対し、

 

「ハンド(の判定)は仕方がないけど、あれがレッドカードなんだ」

 

 「日本にとっては、最大のラッキーな判定だ」

 

・・・

 

などといった意見が

 

インターネット上から多々聞こえてきます。

 

 

 

つまり、

 

“レフェリーの判定ミス(?)”

 

という見解です 

 

 

 

しかし、

 

これらのネット上での意見は、

 

的を得ているのでしょうか?

 

 

 

検証しなければなりません。

 

 

 

この試合の担当をされましたダリル・スコミナ主審(スロベニア)が

 

レッドカードを提示するその直前のシーンと、判定を振り返ります。

 

 

 

試合の勝敗に大きく影響したと考えられるこの判定。

 

 

 

果たして妥当だったのでしょうか?

 

 

 

国際サッカー評議会(IFAB)2017/2018版の競技規則を確認します。

 

 

通称、ハンドと呼ばれる反則。

 

 

「競技者が手または腕を用いて意図的にボールに触れる行為」

 

 

競技規則では

 

「ボールを手で扱う反則」

 

と定められています。

 

 

その際、以下の条件が考慮されると明記されています。

 

・ボールの方向への手や腕の動き(ボールが手や腕の方向に動いているのではなく)

・相手競技者とボールの距離(予期していないボール)

・手や腕の位置だけで、反則とはみなさない

・手に持ったもの(衣服、すね当てなど)でボールに触れることは、反則とみなされる

・もの(靴、すね当てなど)を投げてボールにぶつけることは、反則とみなされる

 

今回は、

 

腕がボールに当たったことが原因ですから

 

関係する項目は、次の3点。

 

それを検証してみましょう。

 

 ◎ボールの方向への手や腕の動き…✔ ボール方向に腕は動いていました 

 

 ◎相手競技者とボールの距離…✔ 充分に離れていました

 

 ◎手や腕の位置だけで、反則とはみなさない…✔ シュートを阻止する意図が見られた

 

 

したがって、ハンドの判定が下されました。

 

そして、

 

そのハンドを行った位置がペナルティーエリア内であったため、

 

日本にペナルティーキック(PK)が与えられました。

 

 

 

ここまでの流れで、

 

「ボールを手で扱う反則」として、

 

日本にPKが与えられたことは、全く問題はありません

 

 

 

ただ問題が、もう1つ。

 

 

C・サンチェス選手が

 

「退場になるべきだったのか、否か」という点

 

考えなくてはなりません。

 

 

 

今回のケースで懲戒措置の対象になった“理由”が、競技規則に定められている

 

「相手の大きなチャンスとなる攻撃を妨害、

 または阻止するためにボールを手または腕で扱う」

 

という点になります。

 

 

いわゆる

 

『反スポーツ的行為』

 

とされるもので、

 

上記(反スポ)であれば“警告(イエローカード)”

 

に値します。

 

 

では、

 

なぜ退場(レッドカード)となったのでしょうか?

 

 

これは、

 

「競技者が、意図的にボールを手または腕で扱う反則により、

 相手チームの得点、または、決定的な得点の機会を阻止した場合、

 反則が起きた場所にかかわらず、その競技者は退場を命じられる

 

という

 

『得点、または、決定的な得点の機会を阻止』

 

に該当するからです。

 

 

 

但し、

 

確認しなければいけない重要なことが、実はもう一つあるのです。

 

 

昨シーズン(2016/17)の競技規則の改訂で、

 

決定的得点の機会の阻止において、

 

「“三重罰”を回避する」

 

というものが登場しました。

 

 

“三重罰”

 

とは、一体何を指すのでしょうか?

 

 

それは以下の3つ

 

①PK

②退場

③次節(次の試合)出場停止

 

です。

 

 

❓ ❔ ❓

 

 

おやおや?

 

三重罰を回避するのであれば、

 

C・サンチェス選手は、退場にはならない

 

ということになりますよね。。。

 

 

 

疑問が沸いてきます。

 

 

 

もう一度最初から、

 

具体例も挙げながら事象と判定を整理してみると

 

・・・

 

今回の判定が明らかになります。

 

 

精査します。

 

・・・

 

例えば仮に、

 

シュートを放った香川選手が、

 

ペナルティーエリア内でタックルを受け、

 

ファウルの判定がなされたとします。

 

 

そういう状況であれば、

 

C・サンチェス選手は

 

「その反則がボールをプレーしようと試みて犯された反則だった場合、

 反則を犯した競技者は警告される

 

という規則に則り、イエローカードで済みます。

 

 

 

しかしながら今回の事象は

 

「ボールをプレーしようと試みての反則」

 

だったのでしょうか?

 

 

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例えば

 

C・サンチェス選手がシュートを胸トラップ、または胸でのクリアを試みた場合の

 

偶発的に生じたハンドか否かといいますと・・・

 

 

画像を観ても明らかな通り、

 

『腕を最大限伸ばし、シュートをブロックしようとした』ことが、

 

客観的に観ても分かります。

 

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つまり、

 

競技者が、意図的にボールを手や腕で扱う反則により、

 相手チームの得点、または、決定的な得点の機会を阻止した場合、

 反則が起きた場所にかかわらず、その競技者は退場を命じられる

 

との規則により、退場が相当と主審は判断したわけです。

 

 

サッカー競技規則第12条  ーファウルと不正行為ー

▶得点、または決定的な得点の機会の阻止

競技者が、意図的にボールを手や腕で扱う反則により、相手チームの得点または決定的な得点の機会を阻止した場合、反則が起きたところにかかわらずその競技者は退場を命じられる。

競技者が相手競技者に対して反則を犯し、相手競技者の決定的な得点の機会の阻止し、主審がペナルティーキックを与えた場合、反則を犯した競技者がプレーしようと試みて犯された反則だった場合、反則を犯した競技者は警告される。

それ以外のあらゆる状況においては、反則を犯した競技者は退場させられなければならない。

 あらゆる状況とは・・・

 ・相手競技者を押さえる、引っ張る、または押す反則を犯す。

 ・反則を犯した競技者がボールをプレーしようとしていない、

  またはその競技者がボールに挑む可能性がない。

 さらには

 ・反則がフィールド上のどこであってもレッドカードで罰せられるものであるとき

  (例えば、 著しく不正なプレー、乱暴な行為など)。 

 

 

 

香川選手のシュートはゴールの枠に飛んでおり、

 

C・サンチェス選手がボールに触れなければ、

 

そのまま得点になっていた可能性が高いシーンでしたが、

 

 一方、ボールにプレーしようとしてはいません。

 

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つまり・・・

 

C・サンチェス選手は

 

❶「決定的な得点の機会を阻止」したことになり、

 

さらに

 

❷「意図的にボールを手または腕で扱った」ため

 

レッドカードが提示され、

 

❸反則を犯した位置がペナルティエリア内であったので

 

日本にPKが与えられた。

 

・・・

 

これがこのたびの判定の経緯です。

 

 

 

このたびは、 ビデオアシスタントレフェリー(VAR)も導入された大会です。

 

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VARの導入により

 

「ゴールになるか・ならないか」

「PKになるか・ならないか」

「一発レッドカードに相当するか・しないか」

「警告や退場における人違いの確認」

 

の4つに対し、主審に助言することが可能になりました。

 

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ただ、競技規則を正しく理解していれば、

 

(主審は)何も迷うことはなかったため、

 

VARがこのシーンで必要になることはありませんでした。

 

 

 

 

スコミナ主審の判定は、極めて妥当であったと考えられます。

 

 

 

正しいルール理解がなければ、

 

プレーヤー自身が苦しむことになります。

 

 

 

判定が出た後に

 

「何で?」

 

と、いくら言っても、

 

もう後の祭りでしかありません。

 

 

 

そのようにプレーヤー自身が、

 

競技規則を充分に知っていなかったために、

 

試合が荒れるケースもしばしばあります

 

 

 

ですので、

 

“そうならない(自の首を自らで絞めない)”ようなプレーヤーの育成

 

指導者は、心がけなければなりません。

 

 

そのためには

 

まず指導者自身が、正しいルール理解をしておかなくてはなりません。

 

 

 

 

「もし反則だったとしても、あれが一発退場になる理由がわからない・・・」

 

 

 

これは、試合後にC・サンチェス選手が記者に残した言葉のようですが、

 

競技規則を熟知していれば、何も疑問は沸かないはずです。

 

 

 

 

繰り返しますが、あのシーンは・・・

 

ハンドの反則、退場、日本のPK

 

で、何も問題はないかと思います。

 

 

 

 したがって、

 

コロンビアサイドにとってはアンラッキーなことでもなく、

 

不利益を被ったわけでもありません。

 

 

 

間違っても

 

ぼんやりと事象を見たその時の“感覚”だけで、

 

「あの判定はありえないな」

 

 

「あれは誤審だ」

 

という誤解をしてはいけません!

 

 

 

ましてや

 

指導者が子どもたちの前で

 

決してそのような発言を率先して行ってはいけません。