浅い見解・・・消される真実
このたびのタイトルの元になるのは、
過酷な異国の地で
再び輝きを放ち始めたこのプレーヤー・・・
現在、スペインでプレーする、CDテネリフェ所属の柴崎岳 選手です。
柴崎 選手(*当時、鹿島アントラーズ)は、
昨シーズン、クラブワールドカップで2ゴールを挙げ、
ゴールデンボール賞に輝いたクリスティアーノ・ロナウド選手(ポルトガル)、
シルバーボール賞のルカ・モドリッチ選手(クロアチア)に続く、
ブロンズボール賞を受賞。
日本のサッカー人だけでなく、世界の人々を驚かせました。
その後(今シーズン)は、
去就が注目される中、
柴崎 選手が選んだのは、遠く離れた異国の地、
サッカー強豪国のスペイン。
ただ・・・次の行く先は
最高峰であるリーガ・エスパニョーラ(1部リーグ)ではなく、
さらにその地は、スペインの国土から離れた
その
「チャレンジ精神」
「意志の強さ」
そして、
『サッカープレーヤーとしてのポテンシャルの高さ』
は、年齢は自身とは随分離れていますが、
期待と尊敬の念を抱きます。
したがいまして、
これから続きます本題は・・・
柴崎 選手のプレーへの批判や悪口では決してありません。
そのことについては、
文章を最後までしっかりと目を通していただきますと
充分ご理解いただけるかと思います。
では、本題に入ります。
つい先日、柴崎 選手の現地でのプレーについて、
以下の記事を目にしました。
「ニッポン版ルーレットだ!」
柴崎の“ガク然プレイ”にスペインメディアも写真付きで絶賛
レアル・マドリードから2ゴールを奪った男は今、
テネリフェの救世主となりつつある。
21日の昇格プレーオフ決勝1stレグで見事なアシストを記録した
柴崎岳の華麗なる“ルーレット”に、現地メディアもメロメロだ。
スペイン紙『MARCA』からプレーオフの主人公と絶賛され、
その評価が急上昇している柴崎だが、現地メディア『eldorsal』は
ヘタフェ戦の最中に飛び出した同選手のクールな“ガク然プレー”に興奮。
相手選手のスライディングをあっさりとルーレットでいなして見せたプレーを
「ニッポン版ルーレット」と表現し、
3枚の写真を掲載しながらジダンばりの美技に酔いしれている。
という内容でした。
気になりましたので、そのシーンを確認してみたところ・・・
全く違った意味で、ガク然とさせられました。
ではそのシーンとは・・・
テネリフェの⑨アントニー・ロザノ選手(ホンジュラス)が、
相手の中盤でのつなぎのパスをインターセプト。
ロザノ選手⑨は、そのボールを柴崎岳 選手⑳にバックパスします。
そのボールを走りながら受けた柴崎 選手⑳は左足でファーストタッチします。
但し・・・
そのボールが少し大きく前に出てしまい、
そのボールに対して、相手④アレハンドロ・ファウリン選手(アルゼンチン)が
(*先ほどロザノ選手⑨に目の前でパスカットされた選手)
このボールに対して、スライディングでディフェンスを試みます。
・・・
それを⑳柴崎選手が右足→左足のソール(足裏)で連続タッチして、
この“スライディングをかわし”ます。
つまり・・・
『ここ』の部分だけ が
過大にクローズアップされた のが、
今回の記事。
このプレーの続きですが、
右、左ソールでの連続タッチで、
局面を、一瞬打開したかに見えたのですが・・・
そのボールは、これまた大きく前方に押し出され・・・
相手⑧メディ・ラセン選手(アルジェリア)に奪われてしまいます。
では、
さらに、詳細を動画で見てみましょう。
〚参考動画①〛◎このシーンは、5分14秒あたりからになります。
👇㊟音声付きの動画につき、再生時に音楽が流れます。
動画を確認した上で、再度振り返りたいと思います。
今回気になった記事のタイトルは、次のようなものでした・・・。
「ニッポン版ルーレットだ!」
柴崎の“ガク然プレイ”に
スペインメディアも写真付きで絶賛
ところでルーレットとは・・・?
多くのサッカーフリークの方は、ご存知かと思いますが・・・
相手守備者の目前で、
両足(*主に足裏)を用いて、ボールをタッチしながら身体を回転させ、
相手をかわすフェイント技術の一つです。
稀代の名手で、
サッカー界では広く(その技術を)“マルセイユルーレット”と称されている
ジネディーヌ・ジダン氏のルーレットを見てみましょう。
〚参考動画➁〛
👇㊟音声付きの動画につき、再生時に音楽が流れます。
FIFA最優秀選手賞を3回受賞した往年のスタープレーヤー、
ジネディーヌ・ジダン氏の現役時のプレーと並べるのは
酷であることは充分承知しています。
しかし・・・
敢えて並べてみました。
ルーレットとは・・・
❶接近した(間合いの近い)相手を突破する技術であり、
❷ドリブル突破である以上、次のプレー(パス、シュート)につながらなくてはいけません
つまり・・・
◎狭いスペースの中、個の力での局面打開に
威力を発揮する技術である
◎ドリブル技術である以上、
ボールは保持し続けることが肝要である
では・・・
柴崎選手のこのたびの実際の局面は、どうでしょうか?
1⃣ルーレットを行う前
スペースは?
前方に『スペースは充分あり』ます。
ファーストタッチは?
相手守備者を前に、『ボールが足下から離れ過ぎ』ています。
2⃣ルーレットの最終局面
抜き去る場面でのタッチは?
最終タッチの『ボールが足から離れ過ぎ』ています。
では、本来どのようなプレーが望ましく、
柴崎 選手自身は、どのようなプレーを行おうと考えていたのでしょうか?
あくまで想像ですが・・・
最初にボールに触った時、
柴崎選手の選択肢は・・・
⑴前方にスルーパス(縦パス)
⑵左右にドリブル(パスコースを生み出すボール運び)
ではなかったのかと推測できます。
では、
なぜルーレット・・・
つまり、
前方に立ちはだかる相手に対して、
身体接触の危険も伴う
“ドリブルの勝負”をしかけることになったのでしょうか・・・?
それは、
ボールのファーストコントロールが乱れたから
(前方にボールが大きく出過ぎたから)
ではないでしょうか。
さらに、
その緊急事態(*ファーストタッチのミス)を
見事な咄嗟の判断と技術(ルーレット)で乗り切ろうとしましたが、
そのプレーは妨げられてしまいました。
つまり・・・
結局は、一連の画像の通り、ボールロスト(*相手にボールを奪われる)。
では、
ルーレット後に行いたいプレー(柴崎選手のイメージ)は、
どのようなものだったのでしょうか?
これも先と同様、
⑴前方にスルーパス(縦パス)
⑵左右にドリブル(パスコースを生み出すボール運び)
ではなかったかと思います。
そして、
これができなかった理由(原因)も、
ルーレット前と同じく、
ルーレット終盤の2タッチ目の
ボールが前方に大きく出過ぎたからです。
これには、“深い理由”があります。
ルーレットを行う際のプレーのスピードが、
「自身の身体能力の許容量を超えた速さになった」
からです。
もう一度振り返ってみましょう。
ルーレット前のボールコントロールはどうだったでしょうか?
前方にボールが出過ぎていました。
つまり、
この場面でのルーレットの動作が、
柴崎選手の
『正確な技術を発揮するのに可能なスピードの“範疇”
(身体制御の枠)を超えてしまった』
わけです。
自動車の運転で例えると解り易いと思います・・・。
高速走行でカーブを曲がり切ることは・・・
不可能です。
緊急事態を打開するルーレットは、
柴崎 選手自身の範囲を超え、
ルーレット最終局面のプレーの精度を乱す結果となりました。
〔ボールが前に出過ぎる➠相手にボールが近づく〕
⇢▲ボールロストを回避するためにスプリントする
⇢▲高速下でのルーレットを強いられることとなる
⇢▲『技術の精度が下がる』
結局は、
ファーストタッチの乱れが引き起こした一連のプレー
でした。
少し横道に逸れますが、
各自のプレーのスピードは、
プレーヤーの身体能力に大きく左右されます。
したがって、
同じ速さであっても
対応できるプレーヤー
と
対応できないプレーヤー
がいます。
それは個人の特徴です。
したがって、
多少ボールコントロールがズレても、
そのズレに対応できるスーパーなプレーヤーがいることも事実です。
しかし・・・
大半の人間が、それほどの身体能力を有しているわけではありません。
特に私たち日本人は、
分け方によれば速さの面で劣る、モンゴロイドに属します。
一方、ネグロイドに属するプレーヤーは、
身体を動かす(*例えば走ること)有利な特徴がいくつかあります。
あくまで平均値ではありますが・・・・
「膝下部分の骨格が長い」傾向があり、
走る際に重要な筋肉である「腸腰筋が強く」、
「骨盤の形状が前傾型」で、
“速く走る”
“前に出る”
といった
『推進力』に長けた体型
をしています。
したがって、
プレーヤー自身(個々の)の身体的特徴によって
可能になるプレー
選ぶべきプレー
は、自ずと変わってくるものなのです。
日本人プレーヤーの特徴とは?
日本人が目指すプレースタイルとは?
・・・
この点に関しましては、
また別の回に述べることとしまして、
重要なことは
『ボールコントロール技術』
なのです。
そのボールコントロール技術とは
「奇抜なものではなく」
「特別なものではなく」
『当たり前に』
『正しく』
“自身の身体のコントロール範囲内”に
ボールを収めることです。
しかも、その場所(*ボールの置き場所)は、極力・・・
繊細な技術が発揮できる
利き足のつま先の前であるべき
と私は考えています。
ですから、
ボールに触れるその時に集中して
意思を持って
ボールにコンタクトしなくてはなりません。
トラップとは、
ただボールを止めるだけではなく
次のプレーを可能にするコントロールであり、
ドリブルとは、
ボールを意図して運ぶコントロールの連続であり、
全てが最終的に
『得点(ゴール)に繋がる“ワンタッチ”』
であるべきです。
それが成された時、
『素晴らしいプレー』
といえるのではないでしょうか。
プレーの正しい価値を正確に伝える大人が
これから成長する子どもたちの近くには必要です。
将来、子どもたちが「世界と渡り合う」ためには、
正しい技術を身につける必要があります。
そのためには・・・
見せかけのもの
感覚(印象)だけのもの
に左右されて(惑わされて)はいけません。
サッカーを正しく理解していないマスメディアは、
(勿論、正しく理解している方もいらっしゃいますが)
何かと面白おかしく、時に囃し立てたりします。
子どもたちの将来を考えるなら
大人の
『真実を見極める目』
と
『物事への正しい理解』
が“絶対に必要”になります。
サッカーの(攻撃の)真の技術とは
“華麗さを周囲にひけらかすもの”ではなく、
実は
“シンプル” で
“重厚” で
そして
『ゴールにつながる“効果的”なもの』
なのです。