広島ユースの取り組みから学ぶこと
先日、現U-16日本代表の森山佳郎監督が、
サンフレッチェ広島ユース監督を務めていらっしゃった時代のことを
お話しされていました。
ちなみに、森山監督が広島ユースを率いた時期、
2003年と2004年に、2年連続でユース三冠のうち二冠を達成し、
特に、この時期を世間からは、"広島ユース黄金時代"と呼ばれました。
(◇現在も強豪チームのひとつですが・・・
この時期の広島ユースは、正に日本のユースサッカーの先頭を走っていたといっても過言ではありません)
では、なぜ強かったのか?
その原因、背景にあるものは何か?
多くの関係者の気になるところです。
あるサッカー関連の番組で話をされていましたことを、ご紹介します。
まず、Jユース(※Jリーグ下部組織)初、
『“全寮制”でクラブを挙げて選手育成と強化』
が実現できたこと。
ただ・・・優勝が続いた後、
広島をモデルにした(広島よりも)経済的に恵まれたクラブが、
こぞって見学に訪れ、“同じような強化”が全国でスタート。
さらに広島以上のことを始めたそうです。
そこで森山監督は、これでは、
「“ハード面”では勝てない」
「“ソフト面”で勝つしかない」
と考えたそうです。
ソフト面・・・つまり、『正しい理念に基づいた指導者の関わり』。
それまであった、全国から広島への優れたプレーヤーの入団は減少。
難しい状況になってきたその中で、ぶれなかった監督の信念とは?
それは(“特別なプレーヤー”は集まりにくくなったけど)
『どこのチームよりも、“選手の成長率”を伸ばしてあげたい。
それだけは、どこにも負けないようにしていきたい』
〈ここからは、番組メインキャスターの方との会話のやりとりをできるだけ正確に書きます〉
MC:「たぶん、どこも、それくらいの気持ちでやると思うのですが・・・
他とは(これは)違う指導法のようなものはあったのですか?」
監督:「他はどうやっているか、取り組みは分からないですけど・・・」
MC:「“育成年代を伸ばす”、“育成年代への自信”のようなものがあるのですか?」
監督:「ポリシーとして・・・
『チームの組織を強化して勝つ』のではなく、とにかく、
『個人を伸ばして、その“強い個”の塊で勝つ』ということがあります」
さらに
監督:「(年齢が)下に行けば行くほど、
例えば小学生で、“組織プレー”を浸透させて戦って勝っても、
(そのプレーヤーたちが)次のステージで輝けない」
一方
監督:「小学生の時に、とにかく“個”にスポットを当てて、
その子が持ち得るべきいろいろなこと、
『テクニック』
『個人戦術』
とか
『自分自身の武器』を伸ばしてあげて、
次のステージに送り込むことが
『育成年代の指導者の一番の役割』だと思います」
MC:「(育成年代の考え方)それは、中学、高校に進んでも変わらないのですか?
ただ、高校生・・・18歳くらいになれば、
その考え方の割合を(ちょっと)変えてもいいのでしょうか?」
監督:「ちょっとだけ割合は変わると思います。
でも基本的には、僕は高校(※広島ユースの指導者)をやっている時も変わりません。
(次に)どのチームに移っても、例えば
『広島のトップに上がっても』
『他のJクラブから呼ばれても』
『大学チームに進んでも』
『どんな指導者』
『どんなシステム』
『どんなサッカースタイル』
でも、生きていけるようにしてあげたい」
MC:「個人のベースや武器がない・・・ただ単に、
判断がそれなりに良くて、ボールが扱え、さばけるだけでは、
あまり先はないということですよね」
監督:「難しいことではありますが・・・
『ボールが来たら前を向く』
『前に向かってプレーする』
『ゴールに向かう』
『相手の倍走る』
『攻守の切り替えのスピードを相手より速くする』
『最後の勝負の部分で闘う』
とか
『サッカー選手としてのベース』を太くしてあげれば
どこに行っても、どんなやり方でも、大丈夫だろうなと思います」
監督とMCの方との一連のやりとりを聞いていますと、
正にこれ(どこに行っても、生きていけるようにしてあげること)が、
“育成の根幹”だと感じました。
そして、偽りなくアレグランは、
この考え方と同じ想いで、今まで活動を続けてきたことを実感しました。
大切なことは、子どもたちの将来を創ってあげること。
子どもたちが、次のステージに進んでも困らないように育ててあげること。
次のステージのチームや指導者に、重宝されるようなプレーヤーを送り出すこと。
・・・これが、育成活動の正しい理念ではないでしょうか。
先回も書きましたが、この理念に則した行動をとっている指導者が、
現在、子どもたちの近くにどのくらい存在するでしょうか?
完璧な人間、全く誤りのない指導者などいません。
しかし、
未来のある子どもたちのために、
大人は正しい努力をしなくてはなりません。
自クラブ、そして自身も、さらに精進です!