ポリバレント・・・
今月末のA代表のW杯前の国内最後のテストマッチ、
ガーナ戦の日本代表選手が発表されました。
監督交代後、
初めて発表されましたメンバー・・・
これまで選ばれていました選手たちばかりで
それほど大きな驚きはありませんでした。
確かにこの時期に
一から選手選考し、
チームを作り替えるためには時間がありません。
妥当といえば妥当です。
ただ・・・
注目していましたあるプレーヤーの名前がありませんでした。
それは・・・
現在、ポルティモネンセSC(プリメイラ・リーガ/ポルトガル)所属の
中島翔哉選手です。
国際親善試合の日本代表対マリ代表、
後半アディショナルタイムに決まった同点ゴール。
このゴールの前のプレーを検証してみます。
後半アディショナルタイム、
中盤でボールを奪った三竿健斗選手のパスを受けた中島選手は、
得意のドリブルで前進しようと試みます。
しかし、そこに猛烈な勢いでマリの選手が寄せてきます。
すると、中島はターンで回転し、相手のプレスをいなし、
相手のバイタルエリア入口付近の(相手にとって)危険な地域で
3人を一気に置き去りにし、
左サイドの小林悠選手へパス。
小林選手がそのボールをファーサイドに送り、
一旦、相手ディフェンダーにヘディングでクリアされるものの、
こぼれ球を三竿選手がファーサイドにダイレクトでクロス。
そのボールを中島選手がワンタッチでシュート(左足インサイド)。
このシュートが得点となるわけですが・・・
そもそも発端は、
“中島選手のボールキープ”からのサイドへの展開
だったわけです。
いやなムードが漂う中、
中島選手のゴールは、
日本を敗戦から救ってくれました。
しかし繰り返しますが
このたびの代表には中島選手の名前がありませんでした。
西野新監督の理由は
ポリバレントがなかった
ということ。
後日、監督は
「全員がポリバレントでなければいけないという意味で言ったわけではない。
スペシャルな選手もいる」
と少し、その先の言葉を濁した説明をされていました。
では、
「中島選手は、スペシャルではないのか?」
ということになりますが・・・
選出されなかったところを見ますと・・・
監督の答えでは
スペシャルではなかったということになります。
他に、中島選手を上回るプレーヤーがいたということ。
また、
戦術的な理由により、
他のタイプのプレーヤーが選出された
ということ。
この2つが考えられます。
例えば、
今回の代表チームは、
中盤に(中島選手とは)タイプの異なる
ボランチ型のプレーヤーが7人も選出されています。
システムが、オーソドックスな4-4-2ではなく
例えば強豪国相手に
3バック、2トップにした場合の中盤をどのような形にするのか?
サイドハーフを除く3枚は、自ずとボランチタイプになるはずです。
(例:アンカーの前に2人のインサイドハーフ)
対戦相手の特徴も踏まえながら、
3年ぶりに選ばれた青山敏弘選手を加えたボランチ勢の中からベストの組み合わせを、
一昨日から始まっています合宿で模索しているはずです。
新監督のイメージとしては、
おそらく中盤は守備的な布陣で臨み
最前線にボールを受ける力の強い選手を配置してくることが予想されます。
監督のチームづくりの中で、
最終選考の際に、予想や期待に反する選考があった過去もありました。
決めるのは監督。
監督は、自身のやりたいサッカーを実現するために
選手を選考します。
それには、
本大会に連れていくことができる人数(登録人数)もあります。
だから、
外野がどうのこうの言う筋合いがないことは
重々承知の上ですが・・・
中島選手のような
単騎で相手エリアに侵入できる選手は、
とても貴重な存在になります。
事実、先に挙げましたマリ戦でも
左サイドでのボールキープ(カットインを試みたプレー)に対し、
相手はたまらずファウルを犯し、
ゴール前の良い位置でのフリーキックを獲得する場面もありました。
これが、エリア内であれば・・・
ペナルティーキックを獲得することになるわけです。
得点力だけでなく
ボールを持って相手陣内に切り込む力を有していることは
とても重要なことではないでしょうか。
2年前のリオデジャネイロ五輪で
日本代表の10番を背負った23歳のアタッカーは、
今季のポルトガル1部リーグで10得点12アシストという好成績を残しました。
(リーグ内で二桁得点と二桁アシストを同時に記録したのは、中島選手だけ)
スペシャリストと呼べる力を持っているプレーヤーを外すのは
非常にもったいないことだと感じるのは私だけでしょうか。
ポリバレント(英:polyvalent)
・・・
本来は、化学において「多価」を意味する言葉だそうです。
この言葉は、今から10年以上前に
2006年から2007年にかけてサッカー日本代表の監督を務めたイビチャ・オシムが、
「複数のポジションをこなすことのできるプレーヤー」
という意味で用いたことで、
サッカーフリークの中では、耳に馴染んでいる言葉でした。
「ユーティリティープレーヤー」
とほぼ同意のポリバレント・・・。
確かに、ユーティリティーも大切ですが
閉塞感があるゲームの中で、
その雰囲気を打破できるスペシャリストも
一方で非常に貴重なプレーヤーではないでしょうか。